4話 爪を剥がれた暗殺者(アサシン)
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21時発のF26便は、日本からロシアに行き、それからF25便に乗り換えアメリカに向かう。これがクロノスのスケジュールだ。
「なんでこんなに回りくどいんだ?」
彼が一番先に思った疑問で、直接アメリカに向かえばいいだろうとも思った。
F26便は出発し、クロノスは久しぶりに死んだように眠れた。
「さて。上層部からの連絡が途絶えた。さてどうする?」
サジは第三部隊で、カイと海彦に相談していた。
「第一部隊が潰れたんだ。最後の作戦に出たんだろうよ。俺達みたいな三軍は所詮第一第二の予備軍でしかなかったわけだ」
カイは捨てるように言葉を吐く。
「カリヒが居なくなった第三部隊は…静かだな」
サジは珍しく弱音を見せる。カリヒがいたから彼は戦ってこれた。サジがこの部隊に編成された時、カリヒからいろいろなことを学んだ。しかしサジは素直にそれを言葉に表せず、そのまま今生の別れをしてしまった。
「ですが、私達で出来ることをやりましょう。カリヒさんやリーナさん、アーシャさんが居ない穴を埋めるにはまず活動在るのみです。彼らが失敗することは無いと思いますが、それでもバッグアップがあればやりやすいでしょう」
海彦は2人を元気づけようと口を開くが、言って3秒ほどで、言葉を発した本人が寂しくなった。
「すみません」
「いやいいよ」
サジは歯痒い思いでいっぱいだった。
「お前ら気合が足りなすぎだぜ」
ミレーナは3人に声をかけた。
「私らはまず、カリヒのために居場所を残すことを考えろ。SRAの誇りにかけてな!」
ミレーナの言葉に、サジと海彦は失いかけていた気力を取り戻した気がした。しかし、カイは違った。
「以前から、俺は全員に言おうと思っていたことがある。でも、中々言い出せなくてな」
カイは首の裏を掻く。
「俺、どうやら肺癌らしいんだ」
彼は決死の思いで言い出した。それを気づいたのは3ヶ月前、カリヒ達が第三部隊を去った時のことだ。彼は喉の調子が悪く、付近の病院に行った所、レントゲンで末期の肺癌である事が判明した。しかし、彼は言い出す勇気がなく、余命1年と申告されていた。つまり、カリヒに合うことはもうできない。
「そうだったのか。だから最近煙草は控えていたんだな」
彼らは又曇天な空気に戻ってしまった。カリヒの存在感の大きさは、彼らの心の支えだった。
今日僕らは、F25便に乗る。
今日クロノスは、F25便に乗る。
僕はアメリカを目指す。
クロノスはアメリカを目指す。
「「さあ!はじめよう!」」
僕は、
クロノスは、
終わりを始める。
死を運ぶ飛行機の音に包まれながら、
僕は、
クロノスは
最後の休
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