第170話 襄陽城攻め3
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いた時、蔡瑁軍が目と鼻の先まで迫ってきていた。周囲の松明の灯りのおかげで敵方の兵数は二千程とわかる。殿の孫堅兵も損耗しほぼ壊滅状態にあった。孫堅は背後の蔡瑁軍の姿を横目で見た後、諦めたように項垂れた。
「思春、私を置いていけ。部下達を頼む」
孫堅は背中越しに甘寧に言った。覇気の無い弱々しい声だったが強い意志を感じさせる声音だった。
「できません」
甘寧は短く返事した。
「最後の命令だ」
孫堅は苦しそうに先ほどより強い口調で言い咳き込んだ。
「文台様を見捨てて。蓮華様にどう顔向けすればよいのです」
「お前は十分に尽くしたさ。これを雪蓮に渡してくれ」
孫堅は弱々しい動きで南海覇王を差し出した。甘寧は南海覇王を凝視し悲痛の表情を浮かべた。
「受け取れません」
甘寧は開け放たれた東門から除く暗がりを見つめた。正宗の援軍は未だこない。
「どうしてですか?」
甘寧は腹の底から呻くように言った。その言葉は正宗への問いかけたのだろうか? 悲嘆に暮れた表情で東門を見つめていた。このままでは孫堅軍は蔡瑁軍から逃れることはできず全滅してしまう。
「来るわけがないさ。車騎将軍にとって私は余所者でしかない」
孫堅は小さく笑い甘寧が正宗への問いかけに代わりに答えた。
孫堅軍の皆は死を悟った。その時、東門の先の暗闇から沢山の馬蹄の音が鳴り響いた。甘寧は顔を上げ馬蹄の音が聞こえる先を凝視した。馬蹄の声は徐々に大きくなっている。大軍の騎兵が東門に迫っている。
「文台様、清河王が助けにきてくださいました」
甘寧は孫堅に声をかけていると、星と愛紗率いる正宗軍が凄まじい勢いで東門に目掛け突入してきた。
「常山の昇り龍・趙子龍なり! 冀州軍の騎兵による突撃の恐ろしさを教えてやろう。愛紗殿、しっかり着いてくだされよ」
「星殿、安心してください。この関雲長がやっと回ってきた出番を台無しにするわけがないでしょう!」
星が颯爽と馬を駆り、その少し後ろを愛紗が追っていく。彼女達の周囲を冀州軍の騎兵一千が駆け抜けていった。騎兵達は孫堅兵達など存在しないかのように速度を落とさず器用に城内の奥に疾走し蔡瑁軍に突撃した。
蔡瑁軍は突然の騎兵による来襲に完全に動揺した様子だったが、直ぐに矢を放つ準備をはじめた。しかし、行動に移る前に騎兵による突撃を許し一気に陣を瓦解された。
正宗軍による蔡瑁軍の蹂躙を呆気にとられた表情で孫堅兵達は見つめていた。
「孫文台、この貸しは高いぞ」
正宗が孫堅に声を掛け悠々と騎兵二千を引き連れ東門を潜り抜けてきた。
「清河王!」
甘寧は感極まった様子で正宗の名を呼んでいた。孫堅は甘寧の様子を察して、力無く顔を上げると信じられな
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