第170話 襄陽城攻め3
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きで積まれていた土嚢は大人数で作業したことも功を奏したのか残すところ一割程に減っていた。
「このくらいでいいだろう。思春、県門を上げてくれ!」
孫堅は城門のある城壁の上にいる思春に大きな声で声をかけた。思春は彼女の指示に頷き兵士達に指図した。しばらくすると県門がゆっくりと上がりはじめた。
県門が城門の扉の中程まで上がった頃、孫堅の背後が慌ただしくなった。
「文台様! 集団がこちらに迫ってきています!」
城門が中ほどまで開いた頃、甘寧が孫堅に大声で呼びかけた。彼女は土嚢の除去を続ける兵士達の監督を中断し緊張した様子で背後を振り向いた。遠目に松明の灯りがいくつも確認できた。その灯りの数を彼女は数えるように凝視した。
「孫太守! 敵にきづかれました!」
甘寧に遅れて孫堅軍の兵士一人が切羽詰った様子で息切れしながら伝令として駆け込んできた。孫堅の顔は一層険しく変わった。
「もう少しだというのに」
孫堅は苦虫を噛み潰したような顔に変わり低い声で愚痴った。
「文台様! どうされますか?」
「思春――! このまま県門を上げてくれ――!」
孫堅は迷わず甘寧に命令した。思春は目配せで部下に作業を進めさせた。
「お前達はこのまま作業を続けて東門を開き門を破壊しろ。その後は撤退の準備をしておけ!」
孫堅は土嚢を除去する兵士達に命令を出すと守備の任についていた孫堅軍三百と合流した。彼女は東門に迫る蔡瑁軍を迎撃するべく彼等に突撃の指示を出す。
「門を破壊するまで二刻(三十分)程だ! ここが踏ん張りどころだ。ここから一歩も蔡瑁軍の兵を通すんじゃない!」
孫堅は南海覇王を天に向かって威勢良く抜き放つと号令を出し自らは先陣を切った。これに同調するように孫堅軍の兵士達も怒号を放ち彼女に続いた。
しばらくせず孫堅軍と蔡瑁軍は衝突した。対する蔡瑁軍の兵数は五百程。蔡瑁軍が数の上では若干勝っていたが孫堅軍の放つ気迫に一瞬気後れし動きが鈍り、そこを孫堅が傍若無人な斬り込みを行い三人が血を撒き散らし絶命した。夜目の効かない夜間戦闘であることも相まり、蔡瑁軍は浮き足立つ。そんな蔡瑁兵達をあざ笑うように孫堅は水を得た魚のように南海覇王で敵の命を斬り伏せていった。彼女が剣を振るう度に血飛沫が上がり、彼女を血で染めるが彼女はそれを気にすることなく歩を進めた。その様に蔡瑁兵達は次第に恐怖の表情に変わっていった。
「雑兵如きがこの孫文台とやりあおうなんて百年早いんだよ!」
乱戦の中、孫堅は敵の血を浴び眼光を輝かせ眼前で抵抗する蔡瑁軍の中央を食い破らんと突き進む。彼女の敵を寄せ付けない勇猛さに感化され、彼女に続く孫堅軍の兵士達も負けじと敵兵をねじ伏せ斬り伏せた。その有様は羊の群れを狩る狼の集団に
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