第170話 襄陽城攻め3
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めいたします。彼女を解官なされば、正宗様に恨みを抱くでしょう。ですが彼女に恩をかければ、必ずや彼女の正宗様の心象は良くなるはずだと思います。それに孫仲謀を幕僚に加える話を進められれば、甘興覇も正宗様への忠義を示すことでしょう」
「機会を与えるとすれば襄陽城の総攻めか」
正宗は独白し朱里に視線を向けた。その様子に朱里は笑みを浮かべ軽く頷いた。
「失態を犯した孫文台であれば、正宗様との関係は協力者ではなく、臣下として扱うことが可能です」
朱里は正宗に自信に満ちた瞳で答えた。正宗は彼女の瞳を凝視した後、深く頷いた。
正宗と朱里が二人で謀議を行う中、孫堅は兵を率い慎重に東門に向けて進軍していた。彼女は少し焦った表情で孫策が向かった西門の方角を時折視線を向けていた。
「少し時間がかかったね」
孫堅は愚痴ると周囲の気配を探りながら夜目が効かない暗闇の中をゆっくりと進みだした。彼女の後ろには孫堅軍の兵士達が足下を気をつけながらゆっくりと着いてきていた。彼女に従軍する兵士達は昼間と違い軽装で身軽な装いだった。
しばらくすると孫堅達が向かう方向とは逆の西門の方角が騒がしくなった。孫策が西門を攻めているのだろう。時間が立たずして炎の燃えさかる灯りが孫堅のいる所からも視認できていた。その様子を孫堅が確認すると彼女は口角を上げ笑みを浮かべた。
「向こうは派手にやっているようだね」
孫堅と兵士達は足の進みを速めると東門に向かっていく。ほどなく彼女達は西門に辿り着くと城壁に足早に駆け寄り鉤縄を城壁の上に向け投げた。孫堅は器用に鉤縄を城壁上に掛け手ごたえを確認するように何度か引っ張ると上りだした。
「蔡徳珪、昼間は散々虚仮にしてくれたじゃないか。必ず私の手でくびり殺してやるよ」
孫堅は悪人顔で瞳を爛々とさせ、蔡瑁への恨み言を愚痴りながら素早く上っていく。彼女が城壁の上に辿り着くと慎重に顔を出し周囲を探りだした。東門側の城壁の上はかがり火の灯りのみが見えるだけで静かだった。孫策が東門を激しく攻めているせいで夜警の守備兵は全てそちらに向けっているのだろう。
孫堅は勢いよく城壁の上に身を乗り出し通路に着地した。
「誰もいないか」
孫堅は猛禽を彷彿する瞳で周囲を見回し舌なめずりする。彼女が通路の様子を確認していると、彼女に続き孫堅軍の兵士達もぞろぞろと城壁を越えてきた。
「文台様」
孫堅に駆け寄ってくる者がいた。
「思春か」
孫堅は声の主が誰か察したのか振り向く。そこには甘寧が立っていた。
「車騎将軍へは話を通せたかい?」
孫堅は甘寧に余計な会話は交えず本題に入った。
「車騎将軍には話を通しました。しかし、」
「上々。さ
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