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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第132話 異邦人
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なかった。

 その頃の彼女へと意識がどんどんとシンクロしているのなら――
 更にあの頃……前世の彼女は蒼く長い髪の毛を素直に流す髪型だったのが、今世の彼女は短い髪型。前世で自らを育ててくれたマジャール侯爵夫人アデライードと同じ髪型と成って居る事から考えても……。

 そしておそらく、ある程度の記憶が蘇えった段階で彼女の貴族としての矜持も出来上がったのでしょう。自らの野望の為には民の迷惑など一切顧みようとしなかった自らの父親。オルレアン公シャルルの行いはすべて否定したと思う。
 前世の彼女は、妹のシャルロットが王太子妃として王家に入る代わりに、オルレアンの家名を継ぐ権利を有していたのですが、その権利をすべて放棄。自らもオルレアンの姓ではなくガリア風に言うとロレーヌ。ロートリンゲンの姓を継ぐ事を望んだのです。

 あの時のガリア……ジョゼフが王位を継ぐ直前のガリアの状況は、一歩間違えば王位を争うふたりの王子の対立により、泥沼の内戦に発展していたとしても不思議ではなかった。そうならなかったのはジョゼフの側に夜の貴族。吸血鬼の支援があったからだけ。
 おそらく、俺では絶対に下す事の出来ない類の決断をジョゼフは下し、その命の元に闇から闇に葬り去られた命の数は……貴族の関係者だけでも二桁では納まらなかったでしょう。

 運……『天命』は因果律を操るハルケギニアの神がシャルル側に着いていたから、運が良かった、などと言う可能性は否定出来る。逆に言うと、シャルルの側が常識では考えられないくらい……異常に運が良かったから、一切の正統性がない。例えば、前王はジョゼフが次の王位に就く事を望み、立太子の儀を行い、幼い頃よりハルケギニア風の帝王学を学ばせ、王家に伝わる秘事もジョゼフにのみ開示されて居た、などと言う事実があったにも関わらず、内戦が起きる危険性がある事も知りながら、ある一定数以上の貴族が、シャルルが王位を継ぐ事を支持する……などと言う、本来考えられない状態が起きた。
 これはつまり、泥沼の内戦が起きる事をハルケギニアの神は容認していた、と言う事。

 そんな彼女が聖戦……と言うと聞こえは良いが、実際は領土欲むき出しの侵略戦争。他国の軍隊によって自らの故郷が荒らされる事を容認出来る訳がない。まして、その後ろには自らの父親を闇に堕としたハルケギニアの神の姿が見え隠れしている。
 いや、神の代行者たるブリミル教の神官、そしてその頂点に立つ教皇庁の連中の姿が、と言い直すべきですか。

 それに、そもそも真っ当な貴族なら、自分の領地内が他国の軍靴に踏み荒らされる事を我慢出来る訳はないでしょう。そう言う点で言うのなら、他国の軍事的支援を当てにしていたシャルル・アルタニャンなどのレコンキスタの三銃士たちとは考え方が一八〇度違う人間だ、と言うべきでしょう
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