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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第132話 異邦人
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 但し、これも俺が纏って居る雰囲気の問題。別にハルヒや有希が特別だと言う訳などではなく、俺と直接関わった女性の三人の内の二人までは似たような態度を取る。

「ヘイヘイ、仰せのままに」

 振り返る事もなく、如何にも面倒だと言わんばかりに右手だけヒラヒラとさせながら答える俺。多分、これは……俺が頼りない人間だと思われるのは、人間としての格の問題。それに、芯が通っていないから、なのかも知れないが。
 そう考えながら、頬には微苦笑を浮かべ――

「そんなに心配せんでも、さつきと弓月さんのふたりは間違いなく無事に帰す心算やで」

 ――普段通り、自分の安全は少し無視をした形の答えを返す。この辺りは俺も通常運転中、と言う感じなのでしょう。
 少なくとも、昨夜の犬神使いを相手にした時の俺は異常。いくら自信があっても、それをあまり表面に出さないようにするのが基本です。
 むしろ自信を持ち過ぎて足元を掬われる可能性の方を恐れますから。

 その瞬間――

「むぎゅ〜!」

 自らの身に施した術の内、物理攻撃を反射する術式が自動起動した事を感じると同時に、後方から何故か、妙に可愛らしい小さな悲鳴が――
 ……と言うか、

「あのなぁ、ハルヒ。これから戦場に赴く仙人に対して、一見無防備に見えるからと言って背中から攻撃を掛けたらどう言う事になるか、……ぐらいの想像は出来ないのか?」

 おそらく、自らが投じた枕……俺が仮眠用に使っていたそれを真面に顔で受け止めたハルヒに対して、振り返りながらそう話し掛ける俺。
 しかし、こいつ、俺の部屋にやって来てから良い所なしだな。

「……あんた、色々と小細工が出来るようね」

 俺の後頭部にぶつかるはずだった枕が、何故、自分に返って来たのか理解出来たハルヒ。そして、そう言った次の瞬間、

「むぎゅ〜」

 再び返される枕。但し、今度のそれは別に術によって返された訳などではなく、真っ直ぐに飛んで来た枕を空中でキャッチした俺が素直に投げ返しただけ、なのですが。
 いくら素早い動作で投じられたとは言っても所詮は枕。まして、投げて来たのが有希や万結ならば未だしもハルヒでは、構えて待っている俺にぶつけるのは不可能。
 取り敢えず、

「まぁ、枕をぶつけて良いのは、投げ返されても文句を言わないヤツだけだな」

 そう言いながら、素早く襖を開け、かなり暗い板間――旅館の廊下と俺の部屋を繋ぐ短い板張りの廊下へと身をすべり込ませる俺。
 その瞬間、襖に何か柔らかいモノが当たった音。
 これでは小学生の修学旅行のノリ。ただ、だからと言って、テンションが下がる訳ではない。

「それじゃ、次に会うのはおはようの挨拶の時だな」

 完全に閉じ切る前の襖に向けてそう告げる俺。
 そ
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