暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第132話 異邦人
[11/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ね。
 ヤツラは自分が権力を握る為に、外国の軍隊をガリアに招き入れようとしていた売国奴。流石にここまで酷い連中は各国の歴史を見ても珍しいのですが。
 少なくとも日本の歴史上で、他国の軍隊の力を借りて日本を統治した王朝や幕府はいなかったと思います。
 第二次大戦以前にはね。

 まぁ、何にしても……。

 俺は場に流され易い性格で、ハルケギニアの聖戦に関わっていたのも流され続けた結果。自分から積極的に関わった訳ではない。しかし、タバサの場合は自らの意志で関わると決めた人間。
 ……確かに洞の戒律で、普通の人間に対処出来ない事柄。例えば、ハルケギニアの聖戦の裏側で動いているクトゥルフの邪神を無視する事が出来ないのも事実ですが、それは流され続けた結果分かった事実。
 多分、深く関わらなければ、ヤツラの暗躍に気付く事はなかった……とは言い切れないけれど、対処が遅れていたのは間違いない。

 そんな俺がハルケギニアの聖戦に関わらない事をタバサは喜んで受け入れてくれるでしょうが、彼女を安全な場所に逃がそうとする事は拒否される事は間違い有りません。
 普段通り眼鏡越しの瞳で真っ直ぐに俺を見つめた後に、小さく首を横に振って拒絶の意を示すだけでしょう。

 それに、俺がハルケギニアに帰らなければならない理由は、タバサだけが理由ではありません。
 あの世界には一人、もう一度、絶対に話さなければならない相手がいます。

 俺の心音を聞き、自らの心を落ち着かせている少女に意識を戻す俺。いや、より正確に言うのなら、俺の腕の中にいる少女の異世界同位体の少女に。
 タバサだけなら、おそらくこの世界には存在していないので、最悪、この長門有希が暮らして来た世界に逃がす――強制的に召喚する方法があります。
 ハルケギニア世界がクトゥルフの邪神の思い通りに滅ぶのなら……。

 しかし、彼女……湖の乙女に関して、その裏ワザを使う訳には行きません。
 何故ならば、今、自らの腕の中にいる少女とハルケギニアに残して来た紫の髪の毛の少女型精霊は――

 まるで幾重にも重なった鎖に囚われたかのようなふたりの時間。しかし、その瞬間、急に現実を伴って動きが戻った。
 それまで俺の背中へと回されていた彼女の両腕がそっと外され――

「今だけは私を見つめていて欲しい」

 少し上目使いに俺を見上げた有希。普段通りの体温に乏しい無機質な声。但し、その瞳は僅かに潤み……。
 そして、そのまま自由になった両方の手。少し大きめのカーディガンの袖に半分ほど隠れた彼女の手。その手を俺の頬に当て――

 しかし……。
 その自らの頬に当てられた手をそっと外す俺。瞳は彼女の瞳を。右手は頬に当てられた彼女の左手を、まるで割れ物を扱うように丁寧に抑えながら。
 確かに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ