第6章 流されて異界
第132話 異邦人
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「最後にひとつ聞きたいだけ。そんなに時間は取らせないわよ」
普段付けているオレンジ色のリボン付のカチューシャを付けていない……長い黒髪を自然に流した状態。旅館に備え付けの浴衣と綿入り袢纏と言う出で立ちは、何時もは見る事の出来ない姿形と言う事で好感度も高く……。
はっきり言うと普段の数倍はお淑やかに見えるから不思議だ。
精神的にあっさり立ち直った……とも思えないのですが、それでも、何時もの調子を取り戻しつつあるハルヒ。もっとも、彼女が世界を滅ぼしかけたとは言っても、実際に彼女が行ったのは夢を見た事だけ。世界が生まれ変わる事を望んだと言っても、その程度の事は誰にだって起こり得る事。その辺りに関して言うのなら、今回の敵――あの犬神使いの青年とは立ち位置が違い過ぎるので、その程度の事で一々落ち込んで居られない、と考えたのかも知れませんが。
そう考え、もう一度、普段とは違う彼女の姿を瞳に焼き付けるかのように見つめる俺。
飾り気のない黒髪と、強い意志を感じさせる黒目がちの大きな瞳。未だ幼さを残してはいるが、それでも栴檀は双葉より芳し。芳紀まさに十八……にはふたつばかり届かないが、それでも輝かしい未来を感じさせる容貌。
ただ、その瞳の奥に少しの……。
そして……心の中でのみ先ほどの考えを否定。今までの彼女……涼宮ハルヒと言う名前の少女が俺に対して見せていた表面上の彼女からすると、これはあっさり立ち直った訳ではない、と考える方が妥当でしょうから。
これは……。これはおそらく空元気。
これから出掛ける――戦いに赴く俺に心配を掛けさせない為の……。
俺を上目使いに見据えるハルヒ。尚、こいつの場合は見つめるではなく、見据えるが相応しいような気がする。
確かに視線から感じる威圧感が強い。但し、それだけが理由ではなく、俺の言葉や表情から言葉の裏側に籠められた真意を見抜こうとしているように感じるから。
何時も……。
「あんたと……有希の関係って何?」
一瞬の躊躇。しかし、そんな物は無かったと自らを否定するかのように、探りを入れるとか、それとなくと聞くとか、そのような穏当な部分を一切感じさせない直球ど真ん中の問い。
……と言うか、こんな質問、普通に考えると答えられる訳がない。
しかし……。
そうやなぁ、……と短く発した後、腕を胸の前に組み、言葉を探す仕草をして見せる俺。
ただ、正直に言うと答えはひとつ。現状では分からないが正しい。何故ならば、今、長門有希と言う少女に対して俺が抱いて居る感情が、実は俺ではない誰か別の人間の想いの可能性があるから。
自らの左腕で、もう一人の――頭の中にゼロとイチに因って記憶されている想いなどではない、まったく別の記憶方法で刻まれていた強
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