第七十七話
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ゃあ駄目なんだ。だから……俺は漆多が漆多であるときに戦う必要があるんだ。人であるうちにあいつを殺さなければならないんだよ。……親友として。
だから俺は逃げるわけにはいかない。ただの化物として漆多を殺すより、人として、俺の最高の親友として死なせたいんだ。たとえそれがどんなに俺にとって辛い選択肢だとしても……。それが俺のできる唯一の償いなんだ。わかってくれ」
呻くように、呟くように、訴えるように俺は語った。
嘘偽りのない言葉だった。
王女は俺を見つめ、少し考える。
「本当に、お前の決意は揺るがないの? 」
「もちろん」
俺は答えた。
「勝算はあるの? 」
俺は首を振った。
「勝算があるかどうかは分からない。……でも、俺は絶対に負けないよ」
「やっぱり勝算も何もなしに行こうというの? 」
「まあ、そういうことになるかな。でも、俺の中では勝てるという確信はある」
「でも、その根拠は何も無いわけなのよね」
「ははは、そうなんだけど。でも約束するよ。絶対に勝って帰って来るから」
「約束……。それは保証も何もない約束なんでしょう? 何の根拠も無いのに気休めだけで簡単に約束なんてしないでちょうだい!! お前もなの?……みんな馬鹿じゃないの」
姫は明らかに怒っている感じ……。俺を睨んでいる。
「どうしたんだ、姫。俺の力を信じてくれよ。必ず帰って来るんだから」
「約束します。安心してください。必ず。きっと。絶対に。間違いなく。帰ってきます。……みんなそう言って逝ってしまった。みんな、口先だけの約束をして。馬鹿よ馬鹿馬鹿。本当に馬鹿みたい。そんな言葉で私が安心するとでも、信用するとでも思ったの」
瞳が潤んでいる。
「なあ、どうしたんだ姫。なんか変だぞ」
俺は動揺を隠しきれない。王女の態度は明らかに普段とは異なっていて、何か変だよ。
唐突に王女が俺に駆け寄りしがみついてきた。
「姫、どうしたんだ? 」
と慌てる俺。
「……お前の言いたいことは分かっているつもりよ。きっと分かっている。だけど、だけど……。だからお願い、シュウ。絶対に死なないで。お前まで死んでしまって、私を悲しませないで。絶対に必ずここに帰って来て! 」
俺を見上げる王女の瞳からはついに大粒の涙がこぼれ落ちている。
声も涙声となっている。
「……大丈夫だよ。絶対に」
「約束よ……本当に。絶対に、絶対帰って来るのよ。私、私……もう、誰も、誰も失いたくない。お願いだから、もう私を一人ぼっちにしないで、お願いだから。もう、ひとりぼっちなんて嫌……嫌、嫌」
あまりに弱々しく悲壮感に溢れた顔で俺を見つめる王女。これまで見せたことのないような姿だ。今にも倒れてしまいそうに弱々し
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