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異界の王女と人狼の騎士
第七十六話
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の? ホントに? ええ! 嘘でしょ」
 彼女は勝手に話し続ける。

「ははは、……はは」
 痛いところを突いてくるなあ。
「いやね、俺、一応長男なんだけど、跡取りじゃないんだよ。あまりに出来損ないなもんで、愛想つかされたみたいでね、跡継ぎ失格になったんだなあ。家からも追い出されて一人暮らしだし……。で、月人家は妹が継ぐことになっているんだよ」

「あれ? あれれ? ……あーーー! 」
 彼女は驚いたような顔をし、両手で口を覆った。もともと大きい瞳をさらに見開き、顔も赤くなっている。
「まっずーいっ」

「どうかしたの? 」

「えへっ、ごめんなさい、私、またドジっちゃったかも……ね。シュウが月人家の人だからてっきり知ってると思ったから喋っちゃった。うーわ、これ、絶対怒られちゃうわ。うーん……まいったなあ、わーんわーん」
 彼女は顔を真っ赤にし、挙動不審に辺りをキョロキョロ見回す。
「うううう。私が話したこと、誰にも話さないでね。ううん、全部忘れて頂戴。でないとぶっ殺すからね絶対に絶対だよ。忘れないでね。さ! ……私用事思い出したから……うん、それじゃね。バイバーイ」
 勝手に勘違いして勝手に喋り、さらには秘密にしておかないと殺すと脅し、あっという間に辻月丹映礼は走り去った。
 結局引っ掻き回すだけ掻き混ぜて、去っていっただけなんだなあ。
 
 なんじゃい。

 ちなみに辻月丹って言ったら無外流の開祖だけれど、その血筋と関係のある子なのかな。それらしいことを言っていたけど。でも彼女、見た目も名前も純粋な日本人じゃあないと思うけど。

 一法実無外 乾坤得一貞 吹毛方納密 動着則光清

 でも、いかな剣客であっても、人でないものを斬ることはできないと思うぞ。
 何か眩暈がする……。

 本気で頭痛がしてきたよ。

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