第七十六話
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て染めてないんだろうけど金色に近い茶色だもんね。前髪は少し長くて、左眼は前髪のせいで隠れてしまっている。
「辻です、はじめまして。こちらでお世話になることになりました。よろしくお願いします」
と、少女がこちらにお辞儀をする。日本語は流暢だ。
そして大きな蒼い瞳が印象的だ。じっと俺の顔を見つめてくるので、なぜだかこちらが照れてしまう。
「はじめまして、月人です」
「まあ、彼女のことはおいおい知っていけばいいだろうな。で……月人。何を教えてほしいんだ? 」
俺は辻って子を一瞥した。まあ、どうせ、同じクラスになるんだから知っても問題ないかなと考える。
「漆多の件なんですけど、あいつ、今日も学校休んでいますよね」
「お前は何か聞いているのか? 」
「いえ。真田に聞いたら、体調が悪いからしばらく休むとかって聞きました」
寄生根に取り込まれ、人で無くなったから来ていないとは決して言えない。
「その通りだよ。彼のお母さんから電話があったんだ。流行性耳下腺炎、どうやらおたふく風邪らしいぞ。熱もかなりあるそうで2週間くらいは休むことになるそうだ。……ちょうど学校もいろいろゴタゴタしているから、まともな授業にもならない可能性が高いからちょうどいいかもしれませんので、ゆっくり休ませて上げてくれって伝えている。お母さんもそのつもりのようなことを言っていたな……。そういや、おたふく風邪は大きくなってからなるとあとが大変なことが多いからな。あいつ大丈夫かな」
と、暢気な感想まで言う。あまり心配していない感じで、全然切迫感がない。
「そうなんですか。……じゃあしばらくは出てこられないですね」
つまり、漆多の母親は何も知らないってことなのかな? どうやって誤魔化したのかはわからないけど。
「ところで、何かあいつに用事でもあるのか? 」
先生は俺と漆多が友達だってことを知っている。何で直接連絡を取らないのか訝しんでいるように見える。
「いえ、特に用事は無いんですけど、何で休んでるのかなって思ったんで。聞いても知っている奴いなかったですから、先生に聞いたほうが早いと思って来ました。……えっと、それだけです。ありがとうございました」
俺はそういうと、そそくさと職員室を後にした。
とりあえず、漆多は学校には連絡を入れるように手配はしていたんだ。つまり、まだ人としての意識はちゃんとしているということか。どうやって母親を騙したんだろう? あいつはお母さんと二人暮らしの筈だから誤魔化しなんかきかないはずなんだけど。
そんなことを考えながら、ぼんやりと物思いに耽っていた。
駄目だ駄目だ。用事も無いのに学校に残っていたら先生に注意されるな。
俺は帰ることにした。
す
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