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異界の王女と人狼の騎士
第七十五話
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管理をしていただけじゃないのってのに、子供みたいな言い訳の説明に終始したらしいのよ。本当に頭来るわよね」
 その時の話を思い出したのか、彼女は途中から何か口調が怒りっぽくなっていた。

「外部の人間が安置所に入ることは不可能……。そりゃそうだよね。仮に入ることができても、そこから彼女の遺体を運び出さなくちゃならないんだから。一人じゃ無理だ。少なくとも複数人じゃないと。でもそれじゃあ、絶対に目につく。……生き返りでもしない限り不可能か」
 俺の中では漆多が侵入したのではという推測がすでに組みあがっていた。結界を張れば、すべての警備システムをとめられる。あとは警備の人間がうまいことその結界から移動させられれば問題はクリアされる。

「ああ! その考えがあったわ。そうよ、寧々が生き返ったっていう可能性が。確かにその可能性もありえるわ。でないと、遺体がなくなるなんて現象を説明できないもの。オカルトでもミステリーでも何でもいいわ。そうだったらいいのに」
 鈴音は嘘か本気かよくわからない口調で自説を展開しはじめた。そうであればいいのにという願望からその結論を信じ込もうとしているのか。

「確かに、彼女が生きていたらいいと思うよ。でも、鈴音。それは……」

「……もちろん分かっているよ。そんなこと。冗談よ。警察が生死の判定を間違える訳ないよ。でも、私は寧々が死んだなんてまだ受け入れられないよ。漆多君だってそうだから、学校に来たくないんでしょう? 思い出してしまうから。……月人君はどうなの? 」

「俺だって信じたくないよ。彼女がもういないなんて」
 信じたくはないけど、事実はどうあがいたところで変えられない。俺の目の前で彼女は蹂躙され殺害されたんだから。それは否定しようの無い、惨すぎる現実なんだ。

「彼女言っていたわ、月人君のことが好きだって。でも漆多君と付き合うことにしたって。どうしてって聞いたら、あなたは寧々のことをなんとも思っていないみたいだからだって言ってたわ。それどころか友達の漆多君との仲を取り持とうといろいろやってるみたいだったしとかね。そりゃ、漆多君も悪い人じゃないし、すごく自分のことを好いてくれているから、月人君に見切りをつけて付き合おうかって言ってたのよ」

「でも、彼女はそんそぶりを見せたことは無かったよ。それに彼女と漆多は結構仲良くやってたみたいだし」
 俺は嘘をついてしまった。

「それあなたが鈍感なだけでしょう。彼女は悩んでいたわ。このまま漆多君と付き合っていいものかって。本当に好きではない人と付き合っていいのかって。でも彼の熱意にずるずると流されてしまっていた。でも、それは漆多君にも失礼だからなんとかしなくちゃいけないって言ってた。それで、自分の気持ちにけりをつけるためにあなたに本気で告白してみるって
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