六話:正せぬ過ち
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るために人殺しをするために育ってきた。
何が正しくて、何が間違っているかを考える時間すら与えてもらえずに。
彼を誰が悪人だと、邪悪な人殺しだと言えるだろうか? いや、言えるはずがない。
多くの者が彼と同じ状況になればそうする以外に何もできないだろう。
この子は紛れもなく、衛宮切嗣が生み出してしまった被害者の一人。
そのことが切嗣の心を深々と抉ってくる。
「僕が本当の意味で救いを行うことができていたら……この子はこんなところで死ぬ必要はなかった…!」
少年は救われるべき人間だった。本当の意味で衛宮切嗣が救いたかった人間だ。
だが、実際はどうであろうか。少年は善悪すら決める間もなく己に殺された。
陽だまりにいる人間の生を守るために自分は救うべき、救われるべき者達を殺している。
余りにも目指した場所とは違う光景に笑いすら起こってくる。
犠牲にしてきた者達だけではなかった。数え切れない程の悲劇を衛宮切嗣は生み出していた。
衛宮切嗣の行動で救われるべき人間までもが犠牲になっていっている。
こんな行動はさっさと止めて、今すぐにでも自害した方がマシだろう。
だが―――
「ごめんね……。君の犠牲は…絶対に! ―――価値あるものにするから…ッ」
―――それだけは、決してできない。銃声と共に、噴き上がる血を浴びながら切嗣は詫びる。
自分は死ぬわけにはいかない。それは今までの、そしてこれからの犠牲への裏切りだから。
彼らの犠牲を価値あるものにするには今まで通りに殺し続けていくしかない。
その先に救いの道がなければ彼らは決して納得しない。
だから、これからも死体の山を築き続けていく。
それが―――
「間違っている……こんなことは間違っている。でも―――これしかできないんだ」
―――どうしようもなく間違っていることを悟っているのだとしても。
衛宮切嗣が戦場を去って一ケ月後にこの地の紛争は終わりを告げた。
だが、その三年後に紛争は再び起きたのだった。
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