六話:正せぬ過ち
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のが彼の役目。
既にこのやり方では誰も救えないことは分かっている。
武器を放り出して怪我人の手当てに奔走する方がよほど他人も自分も救われるだろう。
だとしても、このやり方を貫き続けることしか彼にはできない。
もしも、自身までもが今までのやり方を否定してしまえば犠牲になってしまった者を肯定する者が誰も居なくなってしまう。
それだけは認められなかった。だからこそ、悪魔との契約を結んだ。
いつか、彼らの死が価値あるものに変わる“奇跡”を信じて。
全てを救うというこの目で目にした奇跡から背を背けて。衛宮切嗣は歩き続ける。
世界そのものを滅ぼしかねない憎悪の全てを自分自身に向けながら。
何度でも死体の丘を積み上げていく。
―――無数の骸が横たわっている。
喉を抑え苦悶の表情のまま息絶えた者。助けを求めるように手を伸ばして力尽きた者。
誰も彼もが生を失い、無様に崩れ落ちている場所。
その中で、衛宮切嗣ただ一人が大地を踏みしめている。
仕事は以前よりもスムーズに進行している。今回も革命軍側の主戦力を始末した。
何故、再び革命軍なのかと言えば、この世界は管理世界に加入している。
万が一に革命軍が勝った場合は管理世界から脱退する可能性もある。
そうなれば管理局はこの世界から出ていかなくてはならなくなり、ロストロギアの発見が難航するだろう。
それに現在の体制が崩れれば混乱は大きくなり、さらに犠牲が増えるだろう。
犠牲が少なくなる方を選んでいるだけだ。
だがそれは、所詮は建前に過ぎない。結局、人は死んでいく。
彼は満足のいく生活を送っている者の利益を守るために火消しをするだけの身。
そうしていれば、後は国が勝手に終わらせてくれるだろう。
―――死ぬ必要性のない人間を容赦なく喰い殺しながら。
「ここは随分とあっけなかったな。まさか食事に混ぜた毒薬に気づかないなんてね」
食事に遅延性の毒薬を混ぜ、倒れたところに念押しで毒ガスを散布して命を奪った。
こうしてここに立っているのは生き残りを“処理”するために過ぎない。
正直のところ上手くいくとは思っていなかった。良くて一人ぐらいだろうと思っていた。
本命としては倒れた一人に近づいてきた仲間を纏めて爆殺することであった。
毒ガスはまとめて倒れたので使ったに過ぎない。
結果としては楽に済んだがどうにも釈然とせず、罠かと疑ってしまう。
しかし、やせ細った骸を見ていくうちに納得をした。
「……そうか、例え毒であっても飢えには勝てなかったか」
兵士だというのに、主戦力だというのに痩せた体。
勿論、道端で物乞いをしている者達に比べればマシだ。だが、それでも痩せている。
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