六話:正せぬ過ち
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きた。
殺してきた者達に価値などなかった。価値があるのならば地獄の再現などあるはずがない。
否、再現など断じてあってはならなかった。
地獄を消すために罪のない人間を殺してきた。それが衛宮切嗣の人生。
だというのに、地獄が再現したのならば、それは―――彼の人生の無意味さの証明。
「何も変わらなかった……僕のしてきたことは結局、人殺しでしかなかった」
悟っていた。否、本物の正義の味方である少女達に悟らされていた。
衛宮切嗣は結局、どこまでも利己的に己の欲望を満たそうとしたに過ぎない。
誰かを救う過程を生み出すために心のどこかで彼らの絶望を望んでいた。
己を正当化するために自分の行いの過程で誰かが救われていると信じていた。
だが……目の前に広がる地獄こそが彼の行動の結果。
何も変わることがなく、ただ争いは繰り返され、犠牲は増していくだけという結果。
「僕はこんな未来の為に…! 彼らを殺したんじゃない…ッ!」
尊い犠牲の果てに戦争の終結を、その後の恒久的な平和を与えるつもりだった。
しかし、平和など訪れるはずがなかった。
残った悲しみ、怒り、憎悪が積もっていき五年もたたずに紛争は再び起きた。
以前よりも激しく、何よりも終わりなど訪れぬ泥沼状態に。
正義の味方が再びこの場に戻ってこなくてはならなくなるほどに。
悲劇は繰り返され続けた。人は死に続けた。
「悲しいことを終わらせるために悲しいことをしても、悲しみしか残らないか……確かにその通りだ」
思い出すのはなのはの言葉。自分はそれに対して少しはマシになると返した。
だが、現実としてはどうであろうか。何が変わったのだろうか。
寧ろ、自分が介入したせいで余計に酷くなったのではないのかとさえ思う。
衛宮切嗣にできたことと言えば、根本的な解決ではなく先延ばしだけだろう。
下手をすればそれすらも怪しい。
「どうしてこんなことに……」
思わず零してしまった疑問。だが、答えなど初めから持っていた。
誰がここまでの被害が出る惨状を生み出したのか?
簡単だ。それは一人の愚かな男だ。救いようのない愚か者だ。
誰かを救いたいというエゴを満たすために人の血を啜ってきた悪鬼だ。
かつての戦場でエゴを満たしたというのに未だに足りずに再び戻って来た疫病神。
まるで、死神のようだ。己で争いの種を蒔き、それが実ったところで刈り取りに来る。
ご丁寧に我が身は救済者なのだと高らかに宣言しながら。
「正義というエゴを果たすために何人の命を喰らってきたんだろうな……僕は」
切嗣は自虐のあまりに遂には笑いを零しながら歩きだす。
以前と同じように最少の犠牲をもってして争いを止める
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