第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
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おりですっ。よわっちかったんです!」
「ま、そういうことにしとくか」
「そうしといてください」
怪訝に思うそぶりもなく、すぐに理解してくれたのはやはり珠希の『本気』を知る数少ない人物だからなのだろう――智明は珠希の発言を素直に受け取ってくれた。
☆ ☆ ☆
「……ふぅ」
これから部活があると智明が去った後、ようやく、といった感じで珠希は大きく息を吐き出した。さすがに10年近く前に見知った仲とはいえ、道場時代にはさほど感じなかった年齢による上下関係が孕んだ空気の中というのは珠希も息がしづらい。
これが仕事の側面を持っているならまだ珠希はそっちのほうが慣れている。
自称・他称含めてイラストレーターが氾濫しているこのご時世、依頼主はイラストレーターに対して基本的に優先権を持っている。半年や一年、または作品終了までなど期間を定めた契約でなければ別の依頼受注先を探せばいいだけだ。
だが現実は新たな契約をまとめたり一から折衝をやり直したりなど、時間的・労力的に厳しいところもあるため、依頼元から召喚されし編集や制作進行、ディレクターといった肩書きの人物が飴と鞭を使い分けて制作側をイジメ抜くわけだが。
そして、そんな依頼主の脳内で構築される方向性やら意向というのを敏感に察知し、スイッチが入ればすぐに目に見える形にしてしまうスキルを備え持っているグラフィッカー畑育ちのイラストレーターが教室内に戻ろうとしたところ――。
「ずいぶんと仲が良さそうだね」
「ぅひぃっ!?」
「なにをそんな驚いてるのさ」
「いや驚くよ! いきなり背後から声かけられると!」
珠希が振り向いた先にいたのは自称舞台役者こと、珠希のクラスのクラス委員。
「油断してると危ない目に遭うよ? 甘言と夜道と見知らぬ隣人だけが危険な世の中じゃないし、竜門さん、基本的に人良さそうだし」
「それはどうもご心配ありがとうございますー」
チョロインならきっと一目惚れするくらいの甘言を吐きながら、人当たりのいいふいんき(変換できnry)の――とはいえ雰囲気イケメンと呼ぶにしてはハイレベルな容貌の匂坂雅紀に対し、珠希は先の恨みもあってそっけなく返す。
人の噂が75日どころか半永久的に過去ログに残される時代、他人への恨みも逆恨みも千年どころか半永久的だ。
「で、竜門さん。俺からひとつ聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「なに?」
「体育のバスケでボコられた男子としては、誰が竜門さんから見て弱かったのか知りたいんだけど」
「………………えっ?」
「いやいや、さっき言ってたじゃない。ちょっと本気出したらよわっちぃ男子をボコった、って」
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