第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
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このブラックとは言わないけれど。
「本気で、マジで部活やる気は――」
「ないです。今のあたしには時間的余裕がないんで」
実際、珠希が最も時間を奪われるのは、下手すれば弟妹よりあの厄介な変態官能小説家である。父や兄よりも料理ができず、洗濯は洗濯機の使い方を覚えられず、掃除をすれば何か三つ四つは家のものを破壊する――まさにどこぞのゲームに登場する「家事能力0」というレアスキルを取得している。
唯一の救いはお菓子だけは作れるという点だ。父と兄が料理の師だった珠希もお菓子作りだけは母に学んだほどなのだが、それを加味しても家事能力は四捨五入して0である。
「……そっか。時間がないなら仕方ないな」
「わかっていただけたなら十分です」
お互いにスマホを取り出して連絡先を交換したところで、断固拒否を貫く珠希の今までの態度も踏まえて智明はすんなりと引き下がることを明言した。
一方――やっとこれで帰れる。その気持ちが表情に出ないよう必死に押し隠し、珠希はディスプレイに表示された智明のアドレスを確認し、登録する。
そうしてその場を離れようとした智明だが、ふと何か思い出したように立ち止まると、珠希のほうへ振り返って告げた。
「――にしても珠希。お前、体育のバスケで男子ボコったらしいな」
「はぁっ!?」
智明の発言にさらっと混じってきたとんでもない内容に、珠希は廊下にいた生徒が一斉に振り返るほどの声を上げる。
その表現をそのまま受け取って噛み砕いてしまえば、まるで珠希が男子相手に暴力をふるったかのように勘違いされてしまうではないか。目立つのが苦手とはいえ、それ以上に他人からあらぬ勘違いをされるほうを避けて通りたい珠希からすれば、何としてでも否定しておかなければいけない事案が発生した瞬間だった。
「違うのか? そういう噂が俺のところにも来て、それで珠希がこの学校にいるって知ったんだけど」
「ち、意味的に何かちが……うけど内容的には違わないっていうか」
「どっちだよ」
「やっぱ違います!」
「本当か?」
「ボコってはいません! ちょっと本気出しただけです!」
元来、降って湧いたように生まれる自らのあらぬ噂や勘違いの数々に対し、積極的に解決していく性質でなかったのが諸悪の根源――ではなく不幸の始まりか。
普段はジェット機のタービンより速く回転する咄嗟の機転や、えげつない毒から美辞麗句まで吐き出す饒舌も機能停止に陥った珠希は、ただ今はひたすら否定に転じるしかないと方向性を定め、一気に突っ走っていく。
「そうか。まあ、お前なら大抵の奴は相手にならないだろうけどな」
「そ、そんなことないですって」
「じゃあお前の相手が弱かったってことか」
「そ、そうです! そのと
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