第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
[8/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーへと転身を遂げてきた珠希の実力の乖離は誰が言うまでもなくマリアナ海溝とエベレストほどの高低差がある。
「けどな、祖父ちゃんも珠希のことは認めてたんだよ」
「だからそれも10年近く前のことじゃないですか」
「知らねえのか? うちの祖父ちゃん、滅多に実力を認めないんだぞ」
「知りませんって。見どころがあるとか言われてましたけど」
実の孫すら滅多にその実力を認めることのなかった祖父が、智明の前であるにもかかわらず初めて筋がいいと認めた人物こそ、何を隠そうこの小心者系美少女のフリしたガチオタである。
実のところ、智明の祖父・克明からしても当時の珠希の身体能力と、一を聞いて十を知る天性の素質にはこれぞ天賦の才だと太鼓判を密かに押していた。実力的にはすぐに三段、四段と昇格してもいいくらいだったものの、昇段試験には明確な規定があるために仕方なかったが、当の少女の中身が当時から既に古今東西のマンガと深夜アニメとXやZ指定のゲームに毒されていたことなど、それこそ家族親類以外は誰も知らなかった。
それもこれもとうに10年近く前のことであるが。
「じゃあ話を変えよう。珠希は何か他の部活入る予定でもあんのか?」
「ないです」
「じゃあ――」
「家のことがあるんで。両親共働きだから何かと」
「そんなに忙しいのか?」
「部活で万年腹ペコな弟に目を離すとすぐダラける妹がいるんで」
理由など微塵も知ったことではないし、知りたくもないが――どうにか珠希を空手部に入れたいらしい智明は直接的な勧誘攻勢を諦めて方向性を変えたようだが、口が達者すぎて毒すら吐き出してしまう珠希には何の意味もなさない。
生徒はいずれかの部活または委員会に入るようにとの古めかしい空気があった中学時代、その空気から逃げるように美術部に逃げ込んで幽霊になったにもかかわらず、あまたの運動部からの勧誘をすべてシャットアウトした難攻不落の城である。
同時に、陥落させてくれるようなカレシがほしいと思いつつも美少女すぎて逆に敬遠されてしまう城でもあったが。
「妹っつーと、結月? マジで?」
「あの娘、人前だと猫被りますから智明さんの記憶と実像は違いますよ」
干物妹という某マンガの表現が今ほど紹介時に妹もいないと常々呆れるしかない家事万能長女だが、さりげなく実妹の評価を貶めた点に関しては微塵も反省するつもりがない。
「はあ。マジか……」
智明は頭を抱え、どこか(結月の正体に)呆れたような、(珠希を勧誘することを)諦めたような溜め息を漏らす。
できれば後者であってほしいし、早く帰りたいなー、と同時に願う珠希だったが、智明がこの場を離れるまで勝手に帰るわけにはいかなかった。
後輩は先輩よりも早く来て然るべきものである。ど
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ