暁 〜小説投稿サイト〜
竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
[5/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
校の偏差値が、一瞬だけ珠希の脳裏をかすめていったが、思い返せば中学時代の進路希望先の選択の際に進路担当の教師が「うちの中学から2年連続で稜陽の受験者が出るとはな」とひとりごちていた。
 そのときは去年も稜陽の受験した先輩がいたのか程度にしか思っていなかったが、2年連続の1年目が智明だとは――珠希が智明の存在を忘れていたことも含めて――微塵も思っていなかったのである。

「お前なぁ、そういう無意識に暴言・失言吐くとこ何も変わってねえな」
「こ、これでも考えて言ってるよ。普段は」

 無意識に暴言を吐き、失言するところはあらゆる意味で珠希の昔からの欠点である。
 今のように、まだ冗談やいいまつがいで済ませられるレベルのものをたまにするなら可愛いとも言えなくもない。が、基本的に何でもできる珠希を煙たがって皮肉や罵詈雑言を浴びせる人たちを相手にTTX(テトロドトキシン)レベルの毒を吐いたことは数知れず。おかげで塵芥すら残らない報復合戦になったこともある。

「ほう。俺との再会は普段の出来事じゃないと?」
「ち、違うよ! 普段かもしれないけど、普段よりも嬉しい出来事だよ。中学の友達とかほとんど別の学校(とこ)行っちゃったから、知ってる人全然いなくてさ。でも智明くんがいるならもう大丈夫だよっ」

 出会った頃のように軽い意地悪程度に尋ねた智明だったが、眼前の少女は当時と何ひとつ変わることなくストレートに嬉しい感情を言葉に、表情に混ぜて答えを返してきた。

 なお、自分が類稀なるレベルの美少女である自覚が一切ないこの小心者系失言少女、智明の名前を思い出したときからずっと無意識に智明の両腕を軽く掴んでいるということを付記しておく。
 何気ないボディタッチは女子慣れしてない男子を果てしなく勘違い方向へ吹き飛ばす爆薬であることを、いい加減気付いたほうがいいと思うこの15歳JKは。


「……やっぱ何も変わってねえな」
「えっ? あたしだって少しは成長してるんだけど……あっ! さすがにタメ口はヤバいですね、うん。失礼しました。新里先輩」
「そんな風に態度が急変するのも変わってないな」
「これでも礼儀作法にはうるさい親がいるもので」

 無意識に掴んでいた袖を離し、呆れる智明に深く頭を下げるついでに、礼儀作法以外はてんで無頓着だけどなあのダメ親は、と内心で毒づいておくことも珠希は忘れない。

「まあいいや。呼び方は今まで通りでいいからよ。いきなり苗字に先輩呼びも背中がかゆくなるしな」
「え? でもそれはさすがにアウトじゃないですか? 先輩としての立場的に」
「別に気にしねえけどな。先輩呼ばわりなんて部活で散々されてるし」
「じゃあいいじゃないですか」
「ぶっちゃけると、お前が何も変わってないとなると、先輩呼ばわりは何やら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ