第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
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昔……、小学校の頃に空手やってなかった?」
「………………えっ?」
「やってなかった? というよりは、やってただろ? 絶対に。それに帯まで持ってる」
「どうしてそれを?」
高校入学を機に、珠希はいくつかの素性を隠すことにした。あくまで平々凡々に日常を送り、平穏無事に、『普通』に高校生活を過ごすための選択だった。
空手と柔道の有段者であることもそのひとつだった。
「え? えっと……どこからその話を?」
本題がいきなり喉元に刃を突きつけるような話だった珠希は、反射的に一歩後退りながらも、まっすぐこちらを見つめてくる2年生男子に尋ねる。
すると、その2年生男子は小さく、少し残念そうな溜め息をつき、口を開いた。
「あー。さすがに覚えてないか。俺のことまでは」
「……えっ?」
ガラの悪い3年生に絡まれた星河を助けるために手を上げた際の後始末を買って出てくれた先輩の素性など、そのときの状況もあって知る由もなかったが、どうやらこの2年生は珠希が隠していた空手と柔道の有段者であることも知っているらしい。
「えっと……すみません。もしかして、あたしとどこかで……」
「じゃあ中森克明って覚えてる?」
――中森克明。
眼前の2年生の先輩の中前など一文字も知らない珠希だったが、その名は知っていた。
当時、還暦近くにして無駄のない筋肉と無限大ともいえる寛容さを持ち、その技術以上に年長者と指導者を敬う厳しい規律を珠希と結月に教えてくれた人だ。
「君と、君の妹がいっつも『ししょー』って呼んでただろ? ……俺の祖父ちゃんを」
そう言うと、2年生の先輩はまるで子供のようににかっと歯を見せて笑ってみせ――珠希はようやく思い出した。
危うくロリコンの餌食になるところだった珠希が、結月と一緒に通っていた護身術の道場主の孫にして、通い始めた頃、同じように得意げな笑みを満面に浮かべる一人のガキ大将がいたことを。
確か名前は――。
「――っ! トモくんっ!? えっ? 本当に智明くん?」
「おう。やっと思い出したか」
「嘘でしょ!? どうしてここにいるの?」
「そりゃ俺もここの生徒だからだよ」
――新里智明。
かつて珠希と結月が通っていた護身術の道場主を実祖父に持ち、自らもまたその道場で空手を習っていた。後に珠希も空手を習い始めたので、同じ釜の飯を食う仲であったともいえる。
「え? でもこの学校って――」
「珠希ぃ。てめぇ、いきなり失礼なこと聞きやがって。俺だって勉強くらいするわ」
「あ、それもそうだね。そうだよね」
入学するにあたっての最低ラインが68というこの学
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