第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
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「えーっと、お待たせしました。あたしに何か用ですか?」
部活も委員会も入っていない1年が上級生相手に対話する機会などほとんどない。それを中学3年間で理解・経験してきた珠希は、できるだけ手短に済ませようと短い会話の中にとにかく中身を詰め込み、出入り口に立つ先輩男子に尋ねた。
見ず知らずの人間から指名されて呼び出されて――という今の流れを珠希の過去の経験則から考察すると、そのおよそ60%が男女交際を求める告白、30%が罵声の吐き捨てや暴力込みの報復行為、残る8%が部活動(特に運動部)からのアツい勧誘である。
ちなみにそれでも残る2%は「私のお姉様に――」という百合色の招待状だったというのは触れないであげてほしい。珠希の性癖がこれ以上歪まないためにも。
「ああ。確かに間違いないな」
「……? どういうことですか?」
「俺のこと覚えてないのか? ほら、武道場の裏で――」
武道場の裏――。
その単語で珠希の脳内に一斉にそれに関する記憶がフラッシュバックした。
それはまさに珠希がこの高校に入学してわずか通日後、初めて他人(というより、同じ学校の3年生たち)に手を上げ、打ちのめした出来事だ。そして今まさに珠希の眼前に立つ先輩は――あくまで正当防衛として訴えたい行為をしでかした――珠希の後始末を買って出てくれた2年の先輩に他ならなかった。
「あ……。あ、ああ……。あのときはどうも。本当にご迷惑おかけしました」
「それほどでもない。むしろあの3年の奴らにはいい薬になっただろうし」
「そうですか。それならこちらとしても助かります」
あの後、教師からの生徒指導室への呼び出しも、ガラの悪い3年生たちからの報復もなく、平穏無事な(……と評価したい)日々を送っていた珠希は深く頭を下げ、同時に改めて眼前の2年生の先輩の外見を頭のてっぺんから爪先まで認識する作業に入る。
日本人独特の初対面の人に対する平身低頭ぶりを利用したこの行為も、珠希の中では社交辞令かつ大人世界を生き抜く術だ。仏の顔も何とやら。街中で見ず知らずの人から気さくに声をかけられても「私とどこかでお会いしましたか?」と尋ねるのが許されるのは2度目までだ。
それこそ、この社交辞令込みの認識作業を習得していたおかげで、今まで関わってきたゲーム・出版・同人業界の界隈で広く知人・友人を増やしてきた。
「それで、聞きたいことがいくつかあるんだけど」
「え? あ、はい。何でしょう?」
身長は優に170cmを超え、昴より高く、実際180cm近くあるんじゃないかと思う長身。そして若干色素の抜けた、珠希よりは黒に近い茶髪を短く刈り込んでいる先輩の言葉に、話の本題はそっちだったか、と珠希は認識作業をいったん取りやめる。
「竜門さん。君は
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