第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
口は災いの何とやら
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……このヤロウ。一部始終通して聞いてやがったな。
不意討ちを受けて呆然とする珠希の眼前、ここぞとばかりに黒いオーラを孕んだ満面の笑みを浮かべる雅紀は、言葉の裏にある棘を隠そうともせず質問を投げかけてきた。
「えっ? あ、いや、あれは――」
「柔軟体操、次の体育の授業でも一緒に組めるといいね」
舞台役者を自称する詐欺師の本性を垣間見た気になった珠希だったが、雅紀の黒い面を証明する手立てを持っていない今、何とか現状離脱を試みる。しかし現役詐欺師テニス部員は珠希の離脱を見抜いたか、先んじてその足を今日の体育の授業での出来事を掘り返して釘づけにしてきた。
「い、いや、それだけは勘弁を……」
「遠慮することないよ、竜門さんには見どころあるから、次はもっとキツくいくね」
「い、嫌……。やだ。やめて……。もう無理……」
「あ、それじゃ俺はテニス部の練習あるから」
「え? あ、ちょっと待っ……」
「じゃあね竜門さん。また次の体育で」
他称の語弊があるが、無駄に記憶容量のある珠希からすれば、あの柔軟体操のキツさは『シンクロ』制作時に味わった苦痛と同等かそれに近いレベルだった。国内最大手ゲーム企業からの追い込みという精神的苦痛に対し、今日のそれは肉体的苦痛以外の何物でもなかったが。
そしてこの詐欺師、珠希がトラウマを自覚し始めたのを見るや否や、自らの部活を理由にして逆にその場から離脱を成功させてしまった。
「おい竜門」
「っひ……ぃっ!?」
「何だよ、そんな驚きやがって」
「お、驚くよそりゃあ! いきなり人の横に立ってるんだもん!」
詐欺師から見事なヒットアンドアウェイを食らって呆然とする珠希は、さらなる追い討ちをかけるような背後からの声に過剰なまでに驚いて返す。
「そいつは悪かった」
「わかればいいんだよ、わかれば。まったく」
「ああ。すまん」
小心者としては珍しくもないものの、珠希の驚きっぷりはまったくの意表外だったか、声をかけてきた張本人はすぐさま謝辞を口にし、その後珠希が取り繕ってみせた尊大すぎる態度にも口を尖らせなかった。
「もう、昴ったら。珠希さん驚かしちゃダメだよ」
そして、小心者を驚かせるという業の深い行為を犯した幼なじみをたしなめながら、星河が姿を見せる。
トラウマ付与の特性がついた詐欺師の一撃離脱攻勢に晒され、油断しきっていたところをさらに驚かされるという散々な目に遭った珠希の視界に飛び込んできた、さしずめ栗色のサラサラ髪の天使である。
なおルビに関しては指摘してくれるな。
渡りに船、地獄で仏という表現が実在する以上、どこか病みかけた珠希の精神にホ○ミがかけられていく感覚になるのは別におかしいことではない。傍
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