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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
メイドロボは割と欲しいんですよ。いやマジで
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女も注意したいところである。
 なぜ人生指南役的オネエ系キャラがそれをやっても許されるのかは、作者として少しばかり謎であるものの。


「えっ? いや……、ちょ、ちょい待っておねーちゃん。私さ、これ今でも結構限界近い感じなんだけど?」

 桜鯛と大量の氷が入った発泡スチロールの箱を両手で抱える結月は、早くも筋肉がプルプルと震え始めてきた両の下腕に無茶を言わせて箱を持ちあげてアピールする。

 同じ空手道場にて同じ師から同じ護身術を習ったとはいえ、当時はまだ身体を動かすことが好きだった珠希が空手も並行して習い始め、一年経たずに段位取得まで駆け上がったのに対し、当時既にオタの傾向が出始めていた結月は護身術だけ(・・)に必要な体力と技術だけを覚えるまでに留めていた。
 その意識と姿勢の差が今如実に姉妹の体力差、筋力差となって表れている。

「いやいやいや、そんな謙遜しなくていいんだよ結月?」
「だから謙遜じゃなくてね――」
「あー。やっぱり若い結月はまだ体力あるみたいだし、今のうちお米でも買い置きしとこうかなぁ? 3袋くらい」

 暁斗(あに)が一人暮らしを始めて5人家族になったとはいえ、珠希の家には今まさに野球部にて食べ盛り・伸び盛りの成長中の聖斗(おとうと)がいる。
 竜門家の食費の半分近くをその胃の中に収めるこの弟、一回の食事でご飯大盛り3杯を当たり前のように平らげるにもかかわらず、会話の5回に1回は「腹減った」と呟くのだから、米の消費量も一般家庭の比ではない。

 だがこんな状況下でも一家の家計と食事事情が窮地に陥らずにいられるのは、現役JKでありながら原画家なんぞもやっている、竜門家長女にして小心者オタである珠希の知恵と手腕の賜物だ。

 そして、こんな万能型長女を下手に怒らせるとどうなるか――。

「うわ〜んっ!! さっきのは言いすぎでしたごめんなさいぃぃぃっ!!!」

 丸々一匹の桜鯛と大量の氷の入ったスチロール容器を両手に抱えながら、結月は必死に姉に許しを請うほかなかった。



  ☆  ☆  ☆



「ただいまー」
「ただいまー」

 こうして文字にすると同じだが、珠希の「ただいま」の語尾が平坦であるのに対し、結月のほうの語尾は綺麗な右肩下がりだった。
 理由は言うまでもない。今も両手に抱えている、朝イチで姉が買い込んだスチロール製の箱で大量の氷とともに眠る桜鯛(なかみ)のせいだ。これは最後の最後まで美味しくいただく権利があってもおかしくないくらいに。

「あーっ、もーつかれたー」
「うんお疲れ結月」

 玄関先に桜鯛の入った箱と腰を下ろし、これ以上はもう無理なことを身体で表現せんとばかりに足を投げ出す結月だったが、珠希はそんな妹に気持ちの入っていない言
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