不安-エンザイエティ-part1/怪しい挑戦者
[1/12]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
トリステインのとある野原の道を、一台の馬車が通過していた。そのつくりはとても優雅で、見るからに搭乗者が金持ちであることを物語らせている。
その馬車に乗っているのは、魔法学院の男子生徒の一人、かつてキュルケがボーイフレンドの一人に数えていた少年、ギムリだった。
「ふぅ…もうすぐ学期再開、か」
若干憂鬱そうにため息を漏らすギムリ。地球と同様、ハルケギニアの学生貴族も学校が再開される時期になると生徒が気落ちするのは変わらないようだ。
「サボりたいな…」
などとつい勝手なことを口してしまう。
しかし、学院に無事に戻った方がどれほどよかったことか、と不幸を呪う事態が、彼の身に降りかかる。
ギムリは突然馬車が止まったことに気づくと、前を見る。そこには馬車の運転席が見える窓が張られており、運転手の姿が見えるようになっている。しかし、そこにあるはずの運転手の姿がなかった。
「?」
なんだ?まさか、逃げたのか?軽く舌打ちすると、ギムリは馬車から降りる。もし逃げ出したのだとしたら許せる話じゃない。いくら仕事が辛いとしてもだ。貴族をこんな場所に放置して逃げるなどもってのほかだ。
馬車を降りた彼は、運転席の方に向かう。しかし、そこで驚くものを目にする。
「っ!馬もいない…!?」
なんと、馬車を引っ張っていた馬までもがいなくなっている。彼の記憶では二匹の馬が馬車を引っ張ってくれていた。しかし運転手もそうだが…音も立てず馬が二等ともいなくなるなどありえるだろうか?もし逃げたのだとしても、足音が流石に聞こえてくるはずだというのに。
おかしいと思いつつ、ギムリは周囲を見る。すると、ちょうど馬がいた場所と馬車の運転席に、何かがべっとりと張り付いていた。不気味な黒い液体だ。
(なんだこれ…?)
水にしては濁りすぎている。それになんだか粘り気があるように見えて気味が悪い。あまり触りたくないものだ。
しかし問題はこんな濁り水よりも、どうやって学院に向かうかだ。こんなときに従者がいないのはかなり参る。
「仕方ない。飛んでいくか」
ひとまずレビテーションの魔法を使いながら学院に向かうことにしたギムリだが…
ここで彼のみに災厄が降りかかる。
トントンと、誰かが自分の肩を叩いてきた。
「何だよお前…どうして馬車から」
ギムリは恐らく従者が帰ってきたのだろうと思い、振り向く。だがそこにいたのは、従者ではなかった。
「っ!うわあああああああああああああああ!!」
振り向いた彼はその目に飛び込んだものを目にした瞬間、悲鳴を上げた。
それから間もない頃、ギムリのいた場所には何も残らず、ただ黒い液体が撒き散らされていただけだった。
あれから学院は夏休みが終わりに近づき、次第に生徒が実家から戻ってくることになる…。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ