SS編 心身
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コみたい事がある。
「おまえ、誰だ?」
さっきまで隣にいて寸劇が終わってからクラウスの傍に寄りそっている、マキナを黒髪にして成長させたような容姿で若干ドSな性格の女性に対して、俺は率直に尋ねた。
「ジェーン・ドゥ」
「おい、それは身元不明の女性死体に付けられる呼び名だ。いくらここにいる面子の中で俺が一番年下だろうと、ふざけられたら怒る時は怒るぞ」
「冗談冗談、そんなに気を張らないで。私はルア・イングヴァルト……クラウスの“本妻”よ」
なんか“本妻”という部分を一際強く発言してきた。そこ重要って言いたいんだろうな……。
「ああ、そうか……おまえがルアだったのか」
「劇の内容こそアレでしたけど、個人的には祝福していますよ、クラウス」
「む……ヴィヴィからそう言われると、複雑な気分になる」
「……おまえ達の関係が何となくわかったのは良いとして、とりあえずルアに確認したい。俺はクラウスと共におまえの名前が記された文献を知っているのだが、ルアはニダヴェリール出身という事で間違いないか?」
「ええ。といってもクレスと違って、元々ただの村娘だったけどね。それが一国の王に嫁ぐなんて、村で普通に暮らしてた頃は少ししか考えた事も無かったわ」
それは普通そ……ん? 少ししか? おい、少しは考えてたのか?
ただ……一般市民が王族に嫁ぐのはパッと見シンデレラストーリーのようだが、それは戦乱の時代じゃなかったらの話だ。ファーヴニルを封印した後も政や戦などに揉まれて、色々苦労したのだろう。いや、上に立つ者の器は何気に持ってると思うけど。
「ま、それはいい。ところでルアがいるならクレスもいるんじゃないかと思っていたが……どうやらいないみたいだ」
「当然ね、あの子はまだ生きているもの。死者しか来れないこの楽園にいる訳がないわ」
「そうか、クレスはまだ生きているのか…………って何だとッ!?」
「おいルア、それはどういう事だ? 俺達が死んでから優に百数十年以上経っているのに、普通の人間が生きていられるはずがないだろう?」
「あ、そういえばクラウスは知らないんだったわね……。実はあなたが最後の戦場に出陣した数日後にニダヴェリールのアクーナから手紙が届いたのよ。それによるとクレスは私達が村を出た後、しばらくしてから村を飛び出し……数年経ったある日、一人の赤ん坊を連れてふらりと唐突に帰ってきたの。村長さん達は当然彼女に事情を尋ねたけど、クレスは『ある物に迂闊に触れたせいで、簡単には死ねへん身体になってもうた。もう人の社会におられへんから、誰にも行けない世界に姿を隠すわ』と言って、彼女が産んだらしいその赤ん坊を村に預けてどこかへ姿を消したらしいわ。風の噂によれば赤ん坊はアクーナで大切に
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