SS編 心身
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友達”でしかない」
「そんな……無理です。やっと自分の気持ちに正直になれると思ったのに、もう振り向いてくれないなんて嫌ですよ! あの時……ゆりかごに乗ってどんどん心が無に染まっていく中、私の中に最後まで残っていたのは、去り際に見えたあなたの辛い顔……それに抱いた身が張り裂けそうな罪悪感だったんです。だからこうしてまた会えた事を喜んでいたのに……!」
「そもそも先に別れを告げたのはそっちだろう? 俺やリッドの静止を振り切り、国のため、ベルカのため、世界のためだと言って、あなたはゆりかごに乗って戦乱を止めた……。ヴィヴィが為した事は確かに偉業ではあるが、それは俺達の意思を踏み越えて選択を貫いた結果だ。今更よりを戻したいと言われても、俺達が当時感じた喪失感や無力感は消えやしないし、その後に出会えた妻への想いを偽る訳にはいかない。覇王としてだけでなく死ぬまで妻を愛した一人の男として、あなたの想いに応えてはならない!」
「ま、待って下さい! 私は……もう独りになりたくないんです! 置いていかないで、クラウス!」
「置いていかないで、か……。ヴィヴィ、今あなたが抱いている感情は、ゆりかごに乗る事を決めたあなたに俺達が抱いた感情と同じだ。それを覚えてもらいたい……」
「うぅ……どうしてこんな事に……。私はこれ以上犠牲を出したくなくて、何よりあなた達の生きる未来を守りたくてゆりかごに乗ったのに、そのせいであなた達の心が離れてしまったというの……」
翠色の髪で体格の良い男性クラウスが、金髪でちょっと切ない体形をしている女性オリヴィエに背を向けて去っていくのを、オリヴィエが這いつくばる姿勢で手を伸ばし、悲しげに独白していた。その寸劇の光景を見て、ふと呟く。
「“聖王”は今でも崇められているが、よく考えてみれば生涯誰とも結ばれなかった“独身王”でもあるよな」
「ゲフゥッ!?」
ボディーブローを受けたみたいによろめくオリヴィエ。気のせいかエコーが走り、口から吐血した幻視が見えた。
「ど、独身王とは……グサッと心に来ましたよ……。正直、泣きたいです……」
「実際、私やクラウスから見たら過去の女よね、オリヴィエさんって」
「劇の内容はともかく、俺は別にヴィヴィを過去の女扱いしているつもりはないんだが……。おまえ達もあまり彼女をいじめないでくれ」
「だが本心や事実も結構混じっているから、二人とも思う所があったんじゃないのか?」
実際、寸劇の内容が内容だからオリヴィエが申し訳なさそうな顔をしているし、クラウスもノリで言い過ぎたかもしれないと後悔していた。まあ、痴話喧嘩は犬も食わないとも言うし、二人とも本気で仲違いしたい訳じゃなく、再会した時は素直に喜んでいたから大丈夫だろう。
……で、それはそうとツッ
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