番外編
友に花道を
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設備を使ったあきつ丸に連れられてこちらの世界に来たということだ。
「シュウの目的は比叡の救出だ。そして深海棲艦の渡航設備は、“目的を達した時、元の世界に戻る”ように設計されている」
「黙れ岸田。出て行け。キミと作戦を考えようとした俺がバカだった」
「シュウが救出部隊に加わるということは……比叡に指輪を渡すということは、すなわちシュウが彼女を救出するということだ。つまりシュウは……」
「黙れと言ったはずだ!!」
提督が激昂し、俺の襟をねじり上げ、自分の顔を俺の顔に近づけた。息が荒く、顔が真っ赤だ。相当に頭に血が上っている。
「提督! 落ち着いて下さい!!」
「落ち着いてられるか大淀!! ……分かった。言えよ岸田。もしシュウが指輪を渡せばどうなるかを大淀に教えてやれ!!」
「……指輪を渡してケッコンが成立した途端、恐らくシュウは、この世界からいなくなる」
「そんな……」
そう。この作戦には、たった一つの欠点がある。もし本当に渡航設備によって世界を渡った者が元の世界に戻るトリガーが“目的を達する”ことであれば、シュウは比叡に指輪を渡した途端、元の世界に戻ってしまう可能性が高いのだ。
提督は俺の襟をねじり上げる両手の力を抜かず、むしろどんどん力を込めていく。提督の怒りが空気を伝わって俺の肌にまで突き刺さってくるのが分かる。
「岸田、キミはよくそんな風に平然と残酷なことが言えるな」
「目的を達成するためだ。比叡を助けるためだ」
「助けるためなら、どんなことでもするってのか! 手段は選ばないのか!」
「それが提督じゃないのか」
「……ッ!!」
掴んでいた俺の襟から両手を離し、提督は俺に背を向けた。提督は俺の分身。俺と提督は一心同体。だから提督も同じことを思いついたはずだ。にも関わらずそれをあえて避け、別の手を講じようとするのは、提督が優しいからだ。提督が、いかに比叡をはじめとした艦娘たちを大切に思っているかがよく分かる。
「……岸田、キミは……キミたちの世界から戻ってきてからの比叡を知らないからそんな残酷なことが言えるんだ」
「……」
「キミたちの世界から戻ってきた比叡は、いつもうれしそうにシュウのことを話していた。事あるごとに自慢の弟としてみんなに話し、口癖のように“みんなにも会って欲しいな〜”と言っていた」
「……」
「金剛からの報告では、夜にバットを眺めて落ち込む日もあったそうだ。夜、外で夜風にあたりながら泣いてた日もあった。俺は直感したよ。比叡は、向こうの世界で出会った弟のことを愛していると」
「そうか」
「お前たちの世界に行くと決まった時から、比叡はシュウに会うことをとても楽しみにしていた。あんな比叡は見たことない。それまでも楽しそうに毎日を過ごす子だったが、ここ数日はそれ
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