番外編
友に花道を
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提督」
「おお。何だ言ってくれ」
「俺とシュウを編成しろ」
「却下だ」
俺の案を聞いた途端、提督は即座にそれを否定する。逆に言えば、俺と同じ結論に提督も辿り着いていたことの証拠が、この即座の否定だ。
「提督もシュウを編成することを思いついていたはずだ。違うか」
「……」
「え……橋立様をですか? 彼は戦えるのですか?」
大淀さんが不思議そうな顔をして俺にそう質問する。彼女の疑問はもっともだ。当たり前だがシュウは艦娘ではない、ごく普通の人間だ。何か特殊な訓練を受けているわけでもない。格闘技を習っていた訳でもなければ、喧嘩慣れしているわけでもない。かといって、俺のように艦これのゲームシステムを熟知しているわけでもない。ごくごく普通の中学生。それがシュウだ。
「いや。シュウは戦えません。ごく普通の中学生です」
「ならばなぜ橋立様を編成しようというんですか?」
「シュウ自身は戦えません。ですが、シュウになら、比叡に届けられるものがあります。いわばシュウは、比叡を蘇らせる最後の切り札です」
「岸田。それ以上はよせ。シュウは出撃させない」
俺の説明を提督が制止し、大淀さんが困惑した表情を浮かべた。先ほどから空気がピリピリと肌を刺すように痛い。俺と提督の間で、険悪な雰囲気が流れる。
しばらく困惑していた大淀さんだったが、やがて彼女はハッとした表情を浮かべた。俺がシュウに何を託そうとしているのか気付いたようだ。
「……ケッコンカッコカリですか?」
そう。ケッコンカッコカリ。システム上、ケッコンした艦娘はダメージが全快し、どれだけひどい損傷を受けていたとしても、入渠が不要になる。あとは現地で補給を行えば、比叡は問題なく戦闘続行可能だ。複数回戦闘において、途中で無傷のリザーバーが一人入ることがどれだけのアドバンテージになるかは、想像に難しくない。
俺は以前、比叡とケッコンカッコカリをしようと指輪を渡したときに拒否された。彼女にとって、俺=提督は、指輪を受け取るほどに慕う人物ではない。比叡にとってその人物とは……恐らくシュウ。相手がシュウなら、彼女は指輪を受け取るだろう。
「提督、橋立様にこの話をして編成に入ってもらいましょう。確実を期すために」
「黙れ大淀。シュウは編成要因に加えない。岸田、キミもだ」
提督が強硬に反対するのは容易に想像出来た。もし俺が彼と同じ立場なら、きっと俺も反対するだろう。
「なぜですか? 確実を期すにはこれが一番よいかと思いますが……」
「大淀さん。提督が認めないのには、理由があるんです」
「理由……ですか?」
俺と提督は一心同体だ。だから提督が強硬に反対する理由も分かる。彼が反対する理由は、シュウが向こうの世界の住人であり、深海棲艦の渡航
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