08.ケッコン談義
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岸田が本当に艦隊の旗艦みたいに見えてくるから困る。これまでの長い付き合いの中で、これほどまでに岸田のことを頼もしく思ったことはない。少なくとも、僕の記憶にはない。それほどまでに、今の岸田は頼もしく見える。
『ああモニターしている。それから、比叡からの定時連絡が途絶えた。最後の定時連絡の時点での比叡の消耗がかなり激しい。もう限界のはずだ。アイツのことだから心配はないと思うが、可能な限り急いで欲しい』
「最後の通信地点は変わらないか?」
『動いてはいるがそう遠くはない。もう少し最深部に近い場所というか……座標を送った。確認してくれ』
岸田がキーボードを叩きモニターを確認する。ここから見て、最後の通信地点は元々の目的地点のさらに奥のようだ。
「……最深部に近いな。誘い込まれたか……」
『ありうるな。一対多数の戦いでうまい具合にドツボにはめられたかもしれん。比叡は冷静に戦いを組み立てるタイプじゃないからな』
岸田が舌打ちをしたのが分かった。僕の胸に不安が押し寄せてくる。岸田と提督の話から推察すると、姉ちゃんは今とんでもないピンチに立たされている。手練のはずの姉ちゃんがいいように相手に誘導されているところを見ると、数や戦い方もさることながら、相手は相当に手強い敵ということになる。しかも潜水艦隊をはじめとした防衛網を敷いていたあたり、相手は確実に姉ちゃんを殺す気でいる。
僕の頭に、あの日小田浦で戦ったレ級の凶悪や笑みがフラッシュバックした。あの日姉ちゃんは勝つには勝ったが、体中にひどい傷を負った上での勝利だった。戦いが終わった後の姉ちゃんは、自力では立っていられないほど体力と気力を消耗していた。もし今戦っている相手が、その時以上の相手だったら……そしてもし、そんな相手が複数いたとしたら……体中から血の気が引き、除々に力が抜けてきたのが自覚できた。
不意に、誰かに頭をこそこそと触られる感触がした。肩口を見ると、妖精さんが僕に向かって敬礼をしている。
「あれ……もう一人は?」
妖精さんに聞くと、妖精さんは黙って僕の頭の上を見上げた。
「もう一人はお前の頭の上でなんかごそごそやってるぞ?」
岸田がモニターとにらめっこしながら、僕にそう教えてくれた。右手で探ってみると、確かにもう一人の妖精さんが、僕の頭の上でごそごそ何かをやっているのに気付いた。僕は右手で妖精さんの背中を猫のようにつまみあげ、自分の目の前に持ってきた。妖精さんは少し気恥ずかしそうに、苦笑いを浮かべながら敬礼を返してくれた。
「……なにやってたの?」
僕につままれた妖精さんはそっぽを向き、口笛を吹く素振りを見せる。
肩口にいるもう一人の妖精さんが僕の肩をトントンと叩き、僕の気を引いた。肩にいる妖精さんを見ると、彼は自分の
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