第八・五話 青葉の想い
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、それを可能にする動体視力を持っているというのは明らかだ。でなければ、あんだけ厳しいコースに投げ込んだ私の球をワザとファールにした、なんてことは出来ないはずだ。
「東先輩も、お義理兄さんもそうですよね?」
お義理兄さんこと、東純平。
元鷹尾実業高校野球部エースで四番。
甲子園確実! と言われた決勝の日に階段から落ちて足の靭帯を断裂するという『悲劇のヒーロー』。
怪我さえなければ今頃はプロ野球の世界で活躍していたであろう彼も、優れた動体視力を持つ選手なのは間違いない。
「いやぁ、どうかなー。俺の場合は感覚で打ってたから……あんまり気にしたことないなぁ」
「感覚で打てる方がビックリです」
この兄弟、普通じゃない!
「そうかな? スイングやフォームさえきちんとしてればある程度は出来るものだけど?
雄平に教える時も肘の位置とか、スイングとかしか指摘しないし……」
このお兄さんを見て育った東先輩は、やっぱり天才だなぁ、なんて思ってしまう。
フォームは大切だけど、それだけで勝てるほど野球は甘くないんだけど……。
「ま、雄平は昔から俺の真似をしていたからな。野球バカの兄貴を見て育てばあんな感じになるんじゃないのか」
「そんなもんですかね」
「青葉ちゃんやコウちゃんだって同じもんだろう?」
「いや、私は小さい頃から野球やってたけど、アイツが本格的に野球をやり始めたのは高校に入ってからよ?」
「え?」
「なんせ小5までキャチボールもマトモに出来ない男でしたから」
昔の記憶が思い浮かぶ。
千川小の五年生のチームとの試合。
投手として出てたアイツは今のように豪速球は投げられず。
遅い球をコントロールよく投げることによって打たせて取るスタイルの投手だった。
そんなアイツに私は確かこう言ったはずだ。
『面白いのか? そんなピッチングで』
今思えば私は小さいながらも期待していたのかもしれない。
アイツならもっと速い球を投げられるんじゃないのか?
本気で野球をやれば160qを目指せるんではないか、と。
言われた当人はそんな私の想いにも気付かず。
『野球のどこが面白いのかもわかんねえよ』
そんなことを言っていたけど。
今思えば、あの頃からすでにアイツは野球の才能の片鱗を見せていた。
フィールディングが下手だったアイツは私がバントした球をお手玉していて。
その間に一塁に走った私に向けて投げた一球。
それは、まさにアイツの渾身の一球だった。
あの一球で私はアイツのことを気にかけるようになってしまったのかもしれない。
少なくともあの試合で私が眠れる獅子を起こしてしまったのは間違いない。
若ちゃんのことがあってからも、気づけば私はアイツの
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