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─ぐっ! 飯食って────髪引っ張るな! 鍛練して───涎が……)
一刀が考え事をしようとしても周囲の環境がそれを許さない。
子供たちが好き勝手に引っ付いたり暴れまわったりと、まともに考えることの出来ない状況ではどうしようもない事が分かった。
あまりの異常事態に一刀の頭は、ついに我慢の限界を迎える。
「静かにしろ!!」
『!!!』
一刀の急な大声に、それまで楽しそうに遊んでいた子供たちはピタリと止まり、次の瞬間には全員が揃って泣き出した。
流石の一刀も、幼い子供に対していくら混乱しているとは言え、怒鳴ってしまったことに反省し慰め始めるが、一刀の周囲にいる人数があまりにも多い。
必死に泣くのを我慢している子もいるが、その目尻には涙が浮かんでおり、いつ決壊してもおかしくは無かった。
「あー。悪かった。だから泣き止んでくれ」
一人一人抱き締めながら慰めていき、やっと静かになった頃には、一刀の精神と体力は底を突き始めていた。
「疲れた……」
一刀は疲れた身体を休めるためにも壁に寄りかかり、改めて部屋の中を見渡す。
ハッキリと分かっていたことではあるが、この部屋は一刀の部屋ではなかった。
木製の窓から入る光で部屋の全体像が分かるが、肝心な照明の類が一切ない。
そんな部屋の中で分かるのは、和を感じさせる木造の家であり、見た目は一刀の祖父が待つ道場に似ていることくらいだ。
部屋の広さはおおよそで10坪程。天井や壁は板で覆われており、そんな板間の床の中央に、ポツンと布団が敷いてあるだけである。
窓も有るのだが、板を押し上げて開くタイプであり、ガラスなどは一切使われていなかった。
少しの休憩を取り、体力の回復してきた一刀は立ち上がる。そして、近くの窓から外を覗き見た。
窓からの景色は緑一色。外は完全な森の中であり、一刀の見たことのある風景など一切無い。
夢であってくれと願ったところで、現実が変わることはない。部屋の中に視線を戻せば、子供たちが泣き疲れて、いたる所で眠っている。
(これからどうしようか……)
子供たちを極力布団の近くに移動させてから改めて現状の確認をする。
一刀の悩みが解決される目処は全くと言って良いほど立っていなかった。
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