結
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も自分の意思では……ん? ちょい待ち。それ、もっかい貸して」
「? はい」
差し出された左手のひらに ぽん と球体を乗せて返すと。
何故か、ジリジリと後退されてしまった。
「……分かった。これ、『静謐の泉』の水だ。持ち主の気配を消してる」
「泉の?」
リースもあの場所に居たし、ならば彼女が入れたのだろうか?
「ふ、ふふふ……っ! なんだか知らんが、良い物拾った! これを持って移動しまくれば、ベゼドラは絶対に私を見つけられないぞ!」
やーいやーい、ざまあみろ! と、本当に嬉しそうに、はしゃいでる。
ベゼドラ、実は相当嫌われていたのだろうか?
確かに、好かれる要因がどこにあると尋かれても困る横暴ぶりだったが。
「お気の毒に」
同じ目的の為に同行していた身としては禁じ得ないものを感じつつ溢した呟きも、浮かれたロザリアの耳には届かなかったようだ。
「よし! そうと判れば、さっさと行動するぞ、クロスツェル! 行きたい場所があるなら先に言っとけよ。残りは私に付き合ってもらうからな!」
つばが広い真っ白な帽子を被り。
底がしっかりした薄茶色のショートブーツを履いて。
ワンピースの裾を軽やかに翻した少女は。
そう言いながらも、足先をアルスエルナの方角へ向けている。
「貴女って人は……」
「んだよ?」
「いいえ」
貴女にも敵わないなあと嬉しくなっただけですよ、ロザリア。
「行きましょうか。アルスエルナまでは、秘密の二人旅行ですね」
「妙な言い回しすんな!」
少しも痛くない手刀を自分の肩に残し、すたたーっと前を走っていく。
あっさり開いた数歩分の距離。
教会に居た頃よりもずっと穏やかな気持ちで、小さな背中を歩いて追う。
が。
「? ロザリア?」
彼女が、いきなり立ち止まったかと思えば。
シュバッと、空気を切り裂きそうな勢いで自分の目の前に立った。
そして、
「!」
彼女の右手が、自分の左手を掴み、そのまま左隣に移動する。
「……貴女って、実は女神じゃなくて、小悪魔だったりしませんか?」
「うっ……、うるさいっ!」
帽子のつばに隠れた頬は多分、熟れたリンゴ色に染まってる。
繋いだ手がぴるぴる震えて、心臓の動きまで伝わってきそうだ。
汗ばんだ手のひらがもう、可愛くて愛しくて堪らない。
「ありがとうございます、ロザリア」
「別にっ!」
私が敷いていた境界線。
ベゼドラが壊した距離。
ロザリアが伸ばした腕。
ええ、一緒に歩いていきましょう。
貴女と私、互いに隣同士で。
この道を、行ける所まで…………
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