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逆さの砂時計

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 首を傾げたテオは袋の中身を確かめ、大きな目を丸くして、噴き出した。

「うん、我ながら凄い力を発揮したみたいだ。ありがとう。大切にするね」
「はい」

 あの日貴方がくれたそれは、金銭以上の働きで私を助けてくれました。
 きっと、これからの貴方自身も護ってくれます。

「ではまた、いつか」

 敬愛すべき上司に背筋をぴんと伸ばし、腰を折って礼を示せば

「また、いつか。それまで良い旅を」

 下げた頭に手を(かざ)したテオも、威厳漂う表情で自分を見下ろした。

 正直、次があるとは思えない。
 テオと顔を合わせるのは、これが最後になるだろう。
 目蓋の裏に焼きつけた笑顔を連れて、教会を後にする。

「希望や奇蹟とは……なんとも罪深い」

 突然、うっかり訪れたりするから。
 まだまだ生きたいと、欲が足を引っ張り出した。
 助けてくれた人、導いてくれた人、そして何よりも愛しい少女の存在が、自分に人間を捨てさせようと、強く強く後ろ髪を引く。
 甘美な罠が、こちらへおいでと誘いかけてくる。
 けれど。

「変化を愛した『彼女』に敬意を。私は人間として生き、死にましょう」

 見上げた空は漆黒。
 嫌いだった国の色。
 ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、好きになってしまったのは……
 人間故の流されやすさと受け止めよう。



「なんだそれ?」
「新しい服です。靴と帽子も揃えたので、良かったら着替えてください」

 足元にずらっと並べた計八つの紙袋。
 訝しげにしげしげと眺めるロザリアへ、その中の一つを開けて見せる。

「これって」

 布地の色や手触りや首まわりの造りが、どことなく、教会で追加購入した純白のワンピースを思わせる服。
 違いは長袖であることと、膝下までを隠すスカートの裾に金糸で細やかな花柄の刺繍が施されていること、かな。

「また破くつもりじゃないだろうな?」
「あれはベゼドラの犯行です」
「そうだろうけど。なんか、お前のほうも疑っといたほうが良さげだし」

 と言いつつ、袋から取り出した服や靴を両手で掲げ見る姿は楽しそうだ。
 一応は気に入ってくれたらしい。
 彼女は、飾り気よりも機能性を重視する合理主義。
 軽めの物を選んで正解だった。
 八つの袋ごと別の空間へ跳び、しばらくして戻ってきたロザリアは……

 ……おや?
 不思議そうな表情で頬を掻いている。
 その右手には、透き通る液体が入った透明な球体。
 水? 水の塊?

「なんだろうな、これ。袖に入ってたんだけど」

 興味本位で受け取って、じっと観察してみる。

「水入りの球体にしか見えませんね。覚えはないのですか?」
「全ッ然知らん。少なくと
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