結
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「いえ、なんでもありません。どうやら私は、貴方を含めた周囲の人間に一生敵わないらしいと再認識しただけです」
「愛されてるんだね」
「ええ。不相応なくらい溺愛されてます」
「あはは! それは良い。自覚してるならたくさん返さなきゃ! 皆、きっと待ってるよ。君がその手を伸ばしてくれる時を」
ふんわり細まる目。今度はプリシラの顔が重なった。
「……そうですね。返し切れる気はしませんが、ちょっとだけ派手に大盤振る舞いするとしましょう」
彼女には、生きている間にもう一度ちゃんと挨拶をしなければ。死後何をされるか分かったものではない。
苦笑いで立ち上がった私の肩を、同じく立ったテオに抱き寄せられ。次に浮かんだのはアーレスト。
「また会えて嬉しかったよ、クロスツェル。君に女神アリアの祝福が舞い降りますように」
本物のアリアには拒まれ気味ですけども。
こればかりはどうしようもない。
「ありがとうございます、テオ。貴方の未来にも数多くの祝福がありますように」
私もテオの背中に腕を回す。指先に感じた違和感は、変形した傷跡か。
「でも、良いの? 今日はもう暗いし、宿の手配とかは」
「外に待ち人が居るので。急いで戻らないと捨てられてしまうんです、私」
「それは大変だ。早く行かなきゃ」
「ええ。全力で走らないと」
一歩離れた場所で、互いに肩を揺らして笑う。
失ったと思っていた綺麗な命。今度こそ幸せに……あ、そうだ。
「これ、差し上げます」
「?」
プリシラの餞別とは別にしまっておいた小さな白い布袋を、コート裏から取り出してテオの手に乗せる。
「私の大切なお守りです。御利益が抜群過ぎて身に余るので、貴方が持ち主になっても効果は持続するでしょう」
中身を確かめた大きな目を丸くして、それから吹き出した。
「うん……ああ……我ながら凄い力を発揮したみたいだ。ありがとう。大切にするね」
「はい」
あの日貴方がくれたそれは、金銭以上の働きで私を助けてくれました。きっと貴方自身も護ってくれます。
「ではまた、いつか」
敬愛すべき上司に背筋をぴんと伸ばし、腰を折って礼を示せば
「また、いつか。それまで良い旅を」
下げた頭に手を翳したテオも、威厳漂う真剣な表情で私を見下ろした。
正直、今度があるとは思えない。テオと会うのはこれが最後になるだろう。
目蓋の裏に焼き付けた笑顔を連れて、教会を後にする。
「希望や奇蹟とは……なんとも罪深い」
突然うっかり訪れたりするから、まだまだ生きたいと欲が足を引っ張り出した。
助けてくれた人、導いてくれた人、そして何より愛しい少女の存在が、私に人間を捨てさせようと強く強く後ろ髪を引く。甘美な罠が此方へおいでと誘いかけてく
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