結
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私のせいで酷い怪我を……いえ、死の寸前に至るまで苦しんでいたと」
テオは、何を言われたのか分からないといった顔で大きな目を瞬かせて。
それから、にこっと笑った。
「君のせいじゃないよ。そうだなあ。ちょっと、置き換えてみようか?」
うーん、と唸りながら腕を組みつつ、指先で二の腕を軽く叩く。
「あの場面、君は他人の畑を荒らした加害者。私はおじさんから君を庇い、結果的に被害者になった一般人。おじさんは畑を荒らされた被害者で、結果私を殺しかけた加害者だ。これは間違いないよね?」
「ええ」
「じゃあ、仮におじさんが持っていたのが鍬ではなく、収穫物だったら?」
「……え?」
「君に対し、畑を耕す手伝いをしなさい。これは前払いだ。受け取ったら、さっき荒らした分と合わせてしっかり働きなさい。と、そう言っていたら。君はその提案を蹴り、更なる危険を冒してまで、他の畑を荒そうとした?」
いや、盗人相手にそんな提案をする人はいないと思う。
でも、あの頃の自分は、ただ食べたかっただけだ。
食べていける環境を与えてくれるのなら、断る理由は無い。
首を振る自分に、テオは頷く。
「つまり、おじさんが鍬を振り下ろすのではなく、手を差し出していたら。物の対価が労働であると、身をもって証明できていたら。被害者も加害者も存在しなかった。私はね、あの一幕は社会の縮図だと思ってるんだ」
「社会の縮図、ですか?」
「誰もが必死に生きていた。だからこそ互いに協力し合えばもっと効率良く畑も耕せたし、その分、救えた命もあったのに……現実は、内輪で完結した無数の集合体がいがみ合い対立し、互いを蹴落とそうと躍起になっている。私達は知恵と知識を得た知能を持つ生命体なのに、やってることと言えば、他種族の子供を我が子のように育てる犬以下だ」
排他主義。
ベゼドラが人間を嘲笑う理由の一つ、か。
「自分自身の価値観を絶対的に正しいものと信じ込み、同調しない異分子は害悪として排除したがる。それが一概に悪いとは思わないよ。自分や周囲を守ろうとするのは、生物として当然の本能だ。でも、その姿勢が、加害者や被害者を作り出してる。私達は、全員が拒絶ありきの集団心理が生み出した加害者であり、被害者なんだよ。要するに、あの場面では、誰も悪くない。三人共、自分に余裕が無かっただけ。ね? 君のせいじゃないだろう?」
詭弁だ。
実際は、所有者が大切に育てた畑を荒らされたのだから怒って当然だし、他人の所有物に手を出した自分は絶対に悪い。罰せられて当然の罪人だ。
テオは純粋に巻き込まれた被害者だというのに。
ああ……でもこれは、私が信じていたアリア信仰の思想、そのものだ。
生を取り巻く矛
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