第七十二話
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しかし、今奴に追われている人間もなんだかな、とも思う。せっかく奴の追撃をかわしていたというのに最後の最後、出口付近で逃げようとしたところを気付かれてしまったのだから。……いや、それさえも寄生根の思惑通りなのかもしれない。
しかし、まだ生存者がいると分かった以上、少々のリスクは覚悟してでも近づかなければならない。
敵は察知能力に長け、しかも狡猾な罠を仕込むタイプ。迂闊な行動は取れない、としてもだ。
出口付近で二つの人影が見えた。
すでに終幕間近であることはすぐに分かった。
一人は地面を這うように逃げようとしている。そして、その男を見下ろすよう立っている者の姿がある。後を向いているしこの距離ではもちろん誰だかわからない。
しかし、それほど大きな人間ではない。奴が寄生根なのか?
だがしかし、これまでの俺が戦ってきた寄生根とは異なり、現段階では変態化していない。人間と変わりないシルエットをしているんだ。
ただ、その体からは霧のようなオーラのような、どす黒い何かが立ち上っている。そしてそれは闇よりも暗く黒かった。
刹那、そいつが動いたかと思うと、地面を這っていた男の右足首を掴み、高々と持ち上げた。
「ひぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
恐怖におののく悲鳴が館内に響き渡る。
「やめろ!」
俺は叫びながら駆け出そうとする。
しかし、次の瞬間、寄生根は右腕を男の胸に深々とめり込ませる。
耳を覆いたくなるような悲鳴が高く長く響くが、やがて消えうせて行った。
ぐびぐび
ごりごり、ぼりぼり。
ぐちゃぐちゃ。
ごぼん。
連続して、いやな音が連続する。
「ガハッ!」
男は血を吐き出す。
肉がちぎれるような音と共に、寄生根は男から心臓をえぐり出していたのだった。
ぷちぷちと切れる音が続く。
どすん。
寄生根は掴んでいた男を放り投げる。男はくるくると回転しながら頭から床へと落下し、何かが折れるような音を立ててそのまま動かなくなった。
寄生根は掴んだ手を高々と差し上げ、吠える。
後からだとよく見えないけど、男は心臓を口に含み、こぶし大のそれを丸呑みしたのだった。
ごくん
という音が館内に響く。
俺は吐き気がした。
今度の奴は「共食い」か。
立ち上る暗黒のオーラはますますその濃度を増しているかのように思える。
俺はその悪魔の行為に気圧され、動きを起こすことが出来ずにいた。
「シュウ、そいつを斃しなさい! 」
刹那、館内に声が響く。
王女が階段を下りてきたばかりだった。
俺はその声で金縛り状態から解放された。
俺が動
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