第七十二話
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は一瞬だけ躊躇した。王女をここに残すこと不安を感じたからだ。しかし、階下で襲われているであろう誰
かを助けるためには急がなければならない。
そしてここからなら、階段を下りていったほうが近いようだ。
「わかった。……姫、注意しろよ」
そう言い残すと俺は駆け出した。
階段を踊り場までひとっ飛びで下り、壁を蹴ってその反動で方向転換して一気に階段を下ろうとした。
「!! 」
俺は視界に違和感を感じた……。
それは一瞬の躊躇。
気にする必要などない程度の違和感だった。普段なら気にもしないはずの感覚。
でも、本能的な異変を皮膚で感じ取ったんだ。
全身が総毛立つような感覚が警報を鳴らす。
勢いよく階段を下っていこうとするぎりぎりで俺は階段の手すりに左足をかけ、そのまま斜め上へと飛んだ。
そして、宙へ舞うと天井を蹴り上げた。
その反動を利用して、俺はなんとか階段の踊り場に着地することができた。
俺は眼をこらしてみる。
注意して見なければまず何も気づかないだろう……。階段には、通常の注意力ではまず見えないくらいに細い、細い糸が数本張り巡らされていたんだ。
その場所は、人の膝の辺り、腰の辺り、胸のあたり、首のあたりに位置するように4本。
軽く触れただけで指先がザックリと切れ血が滲んでくる。それは恐ろしいほどの鋭利さ。そしてピアノ線以上の強度を持っているようだ。
もし仮に王女を連れて来ていたとしたら、俺はこの罠を回避することはできなかっただろう。彼女を庇ったところで猛スピードで駆けていたはずだからその速度がそのまま破壊力となる。体はズタズタだろうし、運が悪かったら首が切断されたかもしれない。
罠から王女を守ろうと身を挺すれば確実に首の位置に糸が張られているようにも思える。
さて、……俺は首を跳ねられたら再生できるんだろうか?
しかし、考えている時間は無い。
俺は糸を凝視し、その物質の命の根源を確認し、そこを指先で触れ破壊する。
崩れ落ちるように張り巡らされた糸は霧散した。
これで仮に王女が来ても大丈夫だ。
再び駆け出すけど、先ほどまでのスピードは出せない。拙速さは即、俺の命取りになるからね。
敵は狡猾にもいろいろと罠を仕掛けるようだ。さっきの罠も次の罠への伏線かもしれないから慎重にならざるを得ないんだ。急がなければならないけれど、俺が罠にかかってしまったら元の木阿弥。
唐突に、再びの悲鳴の聞こえた。
俺は一階の出口へと向かう。
しかし、まだ生存者がいたとは……。
これまでの犯行を見る限り、寄生根は殺すことにそれほどの時間はかけていない。奴は追い詰め追い込みながら獲物を駆り立てていたはずなのに、ミスったのだろうか。
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