第七十一話
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く、傷口が抉れ、内臓や骨までが見えてしまっている。
さらに背中の中央辺りには強引に傷口を広げられていて、巨大な穴が開いたようになっている。
「酷いことを……」
思わず声に出していた。
大量の血がまき散らされたんだろう。周辺は血の海となっていた。
まだそれほどの時間が経っていないせいか、血だまりも固まっていない。
どうやら、二人で逃げていたんだろう。血だまりで何度も転んだ形跡がある。
そしてそれは、ここから逃げたのだろう。赤黒い足跡が先へと点点と残されている。
しかし、異臭がするのは相変わらずだ。
俺は血だまりを避けながら遺体の頭部の方へと回り込んで、顔を確認する。
先に逃げた奴の無事を確認した方がいいんだろうけど、まずは被害者が誰かが知りたかった。
「ちっ……やっぱりか」
「どうしたの、シュウ」
王女は二頭のオオカミに次の指示を出し終えると、俺の言葉に問いかけてきた。
「こいつは俺と同じ高校の生徒だよ。クラスは違うけどね」
吐き捨てるように答えた。
こいつは漆多を執拗に苛めていたグループの一人で、前に俺がボコボコにした奴らの一人だ。
「糞。マジで糞だよ……」
呻くように、そして言葉を吐き捨てる。
考えたくない結論がすでに示されている。そのことに対しての嫌悪感からの言葉だった。
あまりに酷い結論。
「とにかく、先を急ごう」
本来なら、俺一人で動いた方が早い。でも王女を残しては行けない。
万一、寄生根が王女を狙った場合に対応が遅れる可能性が高いからだ。。
焦る心を必死に静めながら、俺たちはさらに歩みを勧めていく。
残された血まみれの足跡を追う。
スニーカーらしき足跡は非常に乱れ、時折転んだりしていたのが分かる。
必死に逃げようとしているんだろう。ジグザグに、時折背後を振り返りよろけた形跡さえ見て取れた。
周囲にはなぎ倒された商品やマネキンが転がっている。
その跡をゆっくりとした歩調で追いかけている足跡があった。
歩幅はさして大きくなく、歩いている感じだ。
明らかにそれは楽しんでいるように感じられる。
二つの足跡はトイレへと続いていた。
身障者用のトイレの扉が引き千切られていた。
蹴り壊すのではなく、もぎ取るような形で巨大なスライドの扉が無造作に投げ出されている。
扉には解体用の重機のアームででもはさんだように手形が着いている。
入り口で先ほどの二頭が王女を待っていた。
すぐに彼女に駆け寄ると、何かを伝えているようだ。
「うん、分かった。お前たちは二階に行ったミミズクのフォローをしなさい」
再び、オオカミの式神は短く吼えると、あっというまに闇の中に駆け出していった。
俺は無
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