第七十話
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橋の長さは300メートル程度。歩いてもたいした距離じゃない。
渡りきった堤防の向こう側にショッピングセンターがあるんだけれど、こんな時間だから当然ながら照明も落ちていて真っ暗だ。とは行っても、あちら側は周辺に24時間営業の店があるから車の出入りも結構ある。それらの明かりでショッピングセンターの建物の輪郭が浮かび上がって見えている。
3階建てで、建物が二つあるように見えるのは一つが立体駐車場だ。
橋の手前と向こうでは住宅街と商業エリアの違いがあるためか、夜の賑わいにはかなりの差がある。
振り返れば住宅エリアは明かりがまばらにしか見えず、ほとんど真っ暗といってもいいくらいだ。向こうは騒音もほとんど無い世界なんだろう。それに引き替え、橋の向こうの商業エリアは学園都市の郊外に位置するとはいえ、結構賑やかな感じがする。
住宅街と商業エリアを結ぶこの橋を走る車は無い。なのににぎわっているのは違う住宅街からの客が来ているからだ。住宅街は居住者の経済的な階層によって完全に分けられている。俺がさっきまでいたエリアは学校関係者が住むエリアだけど、どうやらそこに住む人たちは研究の為にまだ学校に張り付いているか、もう明日に備えて寝ているかのどちらかしかいないようだ。
夜中にファミレスなんて利用しない階層の人間しか住んでいないってことだね。
これが学園都市ということだ。
……そういえば空腹を感じている。
王女さえ元気なら、ファミレスで軽く食べてから帰ってもいいんだけど、そういうわけにもいかないしな。
ふと見ると、王女はかすかな寝息を立てていた。
俺はかすかに微笑んだ。
……否、ニヤけた。
うん。結構可愛いんだよよな、やっぱり。
王女の寝顔をみてニヤニヤしているところを誰かに見られたら、確実にロリコンと判断されそうだ。
そんな、どうでもいいことをを考えながら歩いていく。
それはしばしの時間。
ショッピングセンターが近づいてくるにつれ、俺は全身に何か、……嫌な雰囲気を感じ始めていた。
その感覚、これまでも何度か感じたことのあるその感覚。
生暖かく、しかしいやな感じで湿ったものが背中を這いまわるようなな感じ……。
これまでは、その感覚を感じた時には、すでに危険な状態に巻き込まれていた。あとはコテンパンにやられて襤褸雑巾にされていた。
王女がいなければ、何度も解体ショーの餌食になっていただろう。
しかし、今回は違う。
まだ俺は巻き込まれていない。巻き込まれがたの危機ではない。
そう、こちらからその脅威に立ち向かえる立場にいるんだ。
……でも、できれば逃げたいな。
王女も弱っているし、この状態でわざわざ危険を冒すのは賢明ではない。それが妥当
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