第七十話
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そう思いながらも、俺は歩みを止めることはなかった。
ショッピングセンターが近づくにつれ、その脅威の正体が何か分かってきた。
建物を取り囲むように立ち上る紫の煙。
時折、雷のような瞬きが走る。
紫の煙は闇を従え、竜巻のように渦巻いている。その速度はとてもゆっくりとしている。
これが結界?
今までは先に取り込まれていたから、その存在を見ることはなかった。
初めて見る結界の姿だ。
でもこれは普通の人間には見えないんだよな。
「寄生根ね……」
背後で王女が目覚めたようだ。
「シュウ、急ぎなさい。奴が捕食活動を始めているわよ」
俺は頷くと、王女を背負ったまま駆け出す。
駆け出すと背中の王女の重さなど全く関係ない。瞬時に結界の渦の近くまで来る。
橋はショッピングセンターの駐車場を越えて向こう側の道路に接している。だから、店に行くためにはもうしばらく走らなければならない。
橋とショッピングセンターとの高低差は20メートル近くある。
「姫、しっかり捕まって」
同時に俺は歩道の柵に左足をかけると、そのまま橋の下へと飛び降りた。
落下の最中にはもみ上げ付近を下から上へと風が撫でるのを感じた。
尾てい骨に痺れるような寒気。
ビルの5階程度の高さからの着地は極力衝撃を和らげるようにした。猫のようにうまくできたようで、俺は音も立てずに着地した。王女はほとんど衝撃を感じなかったようだ。
さて……。
結界はショッピングセンターの店舗全域と駐車場の一部を取り込んだ状態で施されている。
側まで歩いて行くと王女に促され、俺は彼女を下ろした。
「なあ、姫。この結界をどうやって抜けるんだ」
手を触れてみると、それはぐにゃぐにゃしたゴムボールのような感覚が返ってくる。破れそうで破れない感じがするけど、思い切ってやってみたらいけるかもしれない。結界自体はかなり薄いように感じられる。
「無理に力を入れないで。力任せに抜けようとしたらどういった反応が返ってくるか分からないわよ。場合によっては大怪我するかもしれない」
と、王女は脅しをかけてくる。
「マジですか? でも、どうにかする方法があるんだね」
「もちろん。それに力任せに侵入なんかしたら、寄生根に気づかれるわ。逃がすわけにはいかないんだから。なんとしても捕まえて抹殺しないといけないんだから」
まあそのとおりだな。俺たちが来たと分かれば逃走する恐れもある。偶然とはいえ、思ったより早く遭遇できたんだからこのチャンスを有効利用しないといけない。
王女は両方の手のひらで結界に触れると何かの呪文らしい文言を唱えた。
刹那、結界面と王女の手のひらの間で眩い火花が散り、結界の一部に穴が空
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