第六十九話
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嗅ぐとそれはどうやら王女から漂ってきている。特に香水とか何もつけていないのに体臭がこんなにいい香りなのかな? と思ってみたりする。こんな時でもなんだか余裕ぶっこいているな、俺。
でも、使っているのは俺のボディシャンプーと俺のリンスインシャンプーのみなんだ。どこにも芳香が漂うようなものは入っていない。
うーん?
これは汗とかの臭い? まさかね。汗でこんな高級な香りがするなんてありえん。
人間じゃないじゃん。……あ、人間じゃ無かったな。
王族だからだ、と一言で解決されてしまいそうな話だよな。まじで。
俺は歩きながら、どうでもいいことをいろいろ考える。
上を見上げると満天の星が輝いている。
街の明かりでだいぶスポイルされているとはいえ、大都会じゃないからまだまだ綺麗な空なんだろうな。
少し肌寒いくらいの夜風に吹かれながら、誰も歩いていない堤防の上の道を歩いていく。
時間が時間だから車も通っていない。だから恐ろしく静かだ。
虫の音も聞こえないしね。
そんな中、王女と二人で歩いているんだ。
この姿だけを見たら、兄が遊び疲れて寝てしまった妹を背負って歩いているように見えるんだろうか?
……そういえば、昔、亜須葉と一緒にこんな真夜中の川沿いを二人で歩いていたことがあったなあ。あいつ、怖くて泣き出したりして、俺の手をぎゅっと握って離さなかったなあ。何でそんな夜に歩いていたかは記憶が無いんだけれど。何かどうしてもそうしなければならない理由があったんだとは記憶しているけど、それが何だったかは全然思い出せないや。
なんだかいつも記憶がアヤフヤなんだよな。
昔のことだから覚えていないって言い切っていいんだろうか?
そういえば、ここ数年のことをよく覚えていないんだよ、俺。
そんなことを考えているうちに、橋の袂にたどり着いた。
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