第六十八話
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―――あるものは存在るんだから仕方ない。
まあ、そんな感じ。
どういう原理か分からないけど、飛行機は空を飛ぶし、携帯で遠くの人と話ができる。その程度のもんなんだよね。
「うん、そう思ってもらっていいわ。本来はシュウが考えているようなそんな低レベルなものじゃないけれど、今の私の力ではそれにすら劣る力しか使えない。だから、今の私が感じ取れとれるものは、ほんの僅かなものでしかない。でも、今回みたいに大きな悪意による人殺し現象は、そこに残される犯人の悪意・殺意だけじゃなく、殺される者の恐怖や恨みといった念もこの場に残されるわけだから、残される痕跡は大きいの。……だから今の私でもある程度は感じ取れたわけなんだけれどね」
「じゃあ何か掴めたんだね! 」
「ええ、もちろん。……この犯人は特別よ。通常の人間のレベルでは計り知れない、とてつもなく大きな破壊衝動を持って人を殺しまくってるからね。コイツの残留思念はこの現場のあちこちにコールタールのようにへばりついて気持ち悪いくらいに残されているわ。臭いまでともなっていてとても臭いわ」
「臭いまで感じ取れるのか? 俺にはぜんぜんわからないけど」
感じ取れるのは篭った空気の淀み。そしてここで作業した人間達のひといきれ、その汗とかの体臭の残り香のみ。
残留思念やその臭いなんて考えもつかない。
「ここまであからさまに臭いを残しているなんて。……吐きそうよ」
王女はそういうとその場から離れる。
「大丈夫か? 」
「ええ、大丈夫。もう能力は解除したから。……これは、犯人は馬鹿のように行動しているわけではないわね」
「というと? どういうことなんだい」
「あからさまに自分の行動の痕跡を残してはいるけど、それは人間が検知できるレベルでのことだけ。私の能力でなければ探索できない事柄については、それを邪魔するようなものを残しているってこと。お前には分からないでしょうけど、この臭いがそうよ。……力で犯人の残したものを探るためにはその臭いを伴う残留思念を調べなければならないわ。そうなるとこの臭いが私の内部に入り込んでくるようになっているみたいね。どんなものか分からないけど、長時間続ければ何か影響がでると私の体が警告しているわ。それもかなり危険なものだと思う」
王女はしゃがみこんでしまっている。少し呼吸も乱れている。
痕跡に罠を仕掛けているとは……。
探すためには調べなければならないけれど、のめりこみすぎると寝首をかかれるかもしれないとは。
「厄介だな……」
「そう、厄介だ。だけどもう大体の調べはできたから安心して。ここにいてもこれ以上の成果は得られないと思うから。実際、これ以上いると頭がおかしくなりそうよ。出ましょう」
そう
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