第六十八話
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隙ができた。あとは比較的簡単だったわね」
「それで成功したってわけなのか」
「身構えている人間を操るのは難しいけど、油断していたりびっくりしている状態だと驚くほど心に入り込みやすいのよ。……彼らからはもはや、私たちのことは見えないわ。私たちが存在しているのは認識しているし、話しかければ答えるけど、その記憶は全く残らない。例え後で彼らが拷問を受けたところで、全く知らないことだから話すことはできないわ。たとえいかなる能力者が出てきて、逆行催眠にかけることができたとしても、私たちの存在の記憶を探ることは不可能なのよ」
「すごいんだね。姫の力って」
俺は感嘆してしまった。
異世界の王族の力は一体どれくらいのものなんだろう。今は力をほとんど失っているといいながら、それでも王女のその能力はあらゆる生物を超越している。
「本来なら、あいつらに全部調べさせればいいんだけれど、そこまではできないから調べるのは私達の仕事になるわ。……わかったかしら、シュウ」
「うん。なんとか」
「じゃあ行くわよ」
というと王女はさっさと公園の敷地へと歩を進めた。
俺たちが公園の敷地に近づくと、入り口で立ちはだかっていた警官の一人、これは田中って人だったな、は直ぐに道を空けてくれた。何故か敬礼までしたりしてた。
50m×20m程度の広さの公園の奥に、何本も柱を立て、そこにブルーシートを引っかけることで周囲を囲み視界を遮られた空間があった。高さは2mを超えていてその中をうかがい知ることはできない。近くにこれといって高い建物も無いから、昼間もマスコミがほしがる中の映像を撮ることはできなかったんだろうな。脚立を立ててといっても敷地内に入らないと隠された空間を撮影することはできそうもない。
公園の街頭に照らされた青いその屋根の無いテントは、微風に吹かれてカサカサと音を立てている。
俺たちはブルーシートの壁を平行に重ね、片方を紐で引っかけることで扉としている中へと入っていった。
周囲を囲まれているとはいえ、天井が無いから、外灯の明かりが結構見える。まあ、俺たちにとっては全くの暗闇であっても問題は無いんだけれど。
中は10m四方の空間しかない。
まだ、原状回復は行われておらず、昼間警察が検証を行ったままの状態に近い状態のままのようだ。
もっともその時の状況を知らないから、推測でしかないんだけれど。
ブルーシートで仕切られた空間の中央には滑り台があり、その階段の付近にまだ生々しく大量の血痕らしきものがどす黒く残されていた。
中に入ったとき、変な臭いがしたのは、血の臭いだったのかな。
とはいっても遺体があるわけでもないし、何か証拠となるような物件があるわけでもない。足跡などの痕跡もすでに撮影済み
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