06.重い切り札
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てなくとも、中身は岸田とそう変わらないんだなぁと実感出来た。
しかし大変なものを預かってしまった。これは僕にとっても姉ちゃんにとっても、とても重い代物だ。男性が女性の左手の薬指に指輪をはめてあげることの意味を、僕はよく知っている。『ずっと二人で生きていこう』という誓いの証が、この指輪だ。
もし、ただ渡すだけなのであれば、僕はここまでこの指輪に重量を感じることはなかったのかもしれない。でも、ひょっとしたら僕はこの指輪を渡すことで、元の世界に戻ってしまうかもしれない。
こちらの世界と僕の世界をつなぐ渡航設備は、姉ちゃんとあきつ丸さんが襲われた時点で、すでに敵の手に落ちたと考えるべきだ。とすれば、元の世界に戻ってしまえば、二度と姉ちゃんと会うチャンスはないかもしれない。今回が姉ちゃんに会う、最初で最後のチャンスなのかもしれない。
逆に言えば、この指輪に頼らなくてはならないほどに、姉ちゃんは今追い詰められているともいえる。いくら手練で相手はさほど強くなかったとしても、長い時間何度も何度も休みなく攻撃されていれば、いずれ体力も消耗し、倒れ伏してしまうだろう。
姉ちゃんが一人で戦い始めて、すでに相当な時間が経過している。強さという意味でもみんなの信頼を得ている姉ちゃんが簡単に倒れるということはないだろうが、それでもこの指輪が必要になると予想されるほど、今の姉ちゃんは追い詰められているはずだ。でなければ、提督が指輪を僕に託すなんてことはしないだろう。
答えがまとまらない。出発するまで……せめて姉ちゃんのいる海域に到着するまでには、答えを出しておかなければ……。
不意に、提督の机の上にある通信機がピーピーと音を立てた。提督が立ち上がり、自身の席に戻って通信機のマイクを手に取る。
「まさか姉ちゃん?!」
「いや、これは夕張からだ」
僕は姉ちゃんからの非常通信ではないことにいささか安堵し、ホッと胸をなでおろした。提督はマイクに向かって話し始めている。
「夕張か。準備は出来たか?」
「提督、回収作業及び試運転完了しました。特殊艇“おおたき”改め“てれたびーず”いつでも発進出来ます!」
「てれたびーず? なんだそのふざけた名前は……まいっか。了解した。夕張おつかれ! あとで間宮で天そばとアイスをおごろう」
「やった! 岸田くんがおごってくれる分と合わせて2回ッ!! 提督、ありがとうございます!! それでは比叡さんの分の補給資材を積んでおきますね!!」
プツッという音と共に通信が途絶えた。提督が冷ややかな目で僕を見る。やっぱ船の名前を勝手に変えちゃダメだったのかな……?
「……キミか?」
「何が?」
「あの特殊艇のふざけた名前だよッ!」
で名前を変えること自体はOKだったの
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