06.重い切り札
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が届いたとかで……」
ここで、鎮守府全体に提督の声で放送が入った。緊迫感こそ感じられないが、真剣味が伝わってくる声色だった。
『橋立シュウ、執務室に来い。繰り返す。橋立シュウ、執務室に来い。以上』
「なんだろう?」
「さぁ……?」
岸田に目をやる。岸田はモニターとにらめっこしながらキーボードとマウスをいじるのに必死だ。よし今の内に……
「夕張さん。お願いがあるんだけど……」
「ん? なに?」
「この船の名前なんだけど……」
「一応“おおたき”って名前はついてるけど……改修もしちゃってるし、何なら新しい名前にしてもいいわよ?」
「んじゃ……ちょっとつけて欲しい名前が……」
僕はこの船につけて欲しい名前を夕張さんに伝えた。夕張さんはサムズアップをしてくれ……
「分かったわ! じゃあその名前、船体にプリントしておくわね!!」
と約束してくれた。その約束を聞いた後、僕は運転席に岸田を残し、執務室に向かうことにした。
出撃準備が整いつつあるためか鎮守府内はにわかに慌ただしくなっている。途中すれ違った金剛さんもとても忙しそうだった。その喧騒を尻目に、僕は執務室のドアの前まで来て、そのドアをノックする。
「提督? シュウです」
「おっ来たか! 入ってくれ!」
ドアを開けると、コーヒーの良い香りが室内に立ち込めているのが分かった。提督が二人分のコーヒーをドリップしてくれていたのだ。
「よっ。コーヒーももうすぐ準備出来るぞ。ソファに腰掛けて待っててくれ」
言われたとおり、僕はソファに腰掛けた。ほどなくして、提督も二人分のコーヒーを持って僕の向かいのソファに腰掛ける。
「金剛には毎度イヤな顔をされるんだが……実はおれ、コーヒー好きで結構こだわってるんだ。砂糖とミルクは好きなだけ使ってくれていいからな」
そういってはにかんだ提督が淹れてくれたコーヒーは、確かに飲みやすくて香りがよく、とても美味しい。僕はどっちかというと甘ったるいコーヒーが好きなのだけれど、このコーヒーなら砂糖もミルクもいらないぐらい、スッキリとして飲みやすい。
「あのー……提督?」
「ん?」
「僕を呼んだ理由は?」
「んー……なんつーのかな……男同士の話がしたかったっつーか……」
「?」
なんだろう。今一提督の答えがはっきりしない。男同士の話? どういうことだ?
「比叡、お前のうちでやっかいになってる間にさ、料理とかやった?」
「よく玉子焼き作ってくれてたなー……でも最初の頃の料理って料理っつーかクリーチャーだったんだよね……目玉焼きとか……」
「あいつ、よく目玉焼きで器用に失敗出来るよな……」
「そうだね……焼き方を聞いてみたけど、結局教えてくれなかったし」
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