06.重い切り札
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港に停泊している漁船と同じくらいの大きさだ。漁船と違うところは、小さな砲が船の前方に一つ積まれていることだろうか……こんなものを岸田は運転出来るのか……
「いや? おれが船舶免許なんか持ってるわけないじゃん」
「え?! じゃあ運転出来ないの?!」
「おう」
そんなバカなッ?! じゃあさっき自信満々で『心配はいらん。キリッ』とか言ってたのは何だったんだよ岸田ッ!!
「あ、そうそう。岸田くんからの注文、一応形にしてみたから運転席に上がってみて!」
「よっしゃ助かる!! さすが実験兵装艦の夕張たんだ!!」
僕の無言の抗議をよそに、岸田は夕張さんのセリフを聞いた途端にガッツポーズを見せて船の運転席に入った。僕と夕張さんも、ウキウキ顔の岸田につられて運転席に入る。運転席には通常、舵やアクセルがあるはずなのだが、この船にはそれがない。あるのは椅子とパソコンのキーボードとマウスとモニター、あと休憩用のソファーだ。
岸田がモニターのスイッチを入れる。船に電源が入り、船体から物々しいエンジン音が聞こえ始めた。モニターにはこの船が映し出されている。
「岸田くんの希望通り、全部このキーボードとマウスで操作できるようにしたわよ。シフトキーを押せばモニターが主観モードになって、主砲の狙いがつけやすくなるわ」
夕張さんが胸を張り、誇らしげにそう言う。岸田がキーボードのシフトキーを押すと、モニターには今主砲が向いている方向の景色が映し出され、マウスを上下左右に動かすと、それに連動して主砲が動いている。……あれ? この感じ、なんかどこかで見た覚えがあるぞ?
「なあ岸田、これって……」
「おう。今おれがはまってるWorld of Warshipsと同じ操作方法にしてもらった。これならおれでも操作できるからな」
World of Warshipsってのは、岸田が最近ちょくちょくプレイしている海戦ゲームで、僕も何度かそのプレイを見たことがある。なるほど。これなら岸田でも操縦出来そうだ。
「さすが夕張たん! 今度天ざるそばおごるよぉおおお!!」
ひと通り操縦システムをいじり倒した後、岸田は揉み手をしながら体中をくねくねと動かし始めた。その様がなんだかキモくて仕方がない。
「ありがと! 帰ったら感想聞かせてね!」
「言う! 感想言う!! 夕張たんのためにがんばるよぉおおお!!!」
執務室で見せるイケメンな岸田と同一人物とは思えないその様子を尻目に、僕は工廠を見回す。誰か足りないなぁと思ったら明石さんがいない。さっき金剛さんと顔を見せた時は夕張さんと一緒にスパナを振り回していたのに。
「夕張さん、明石さんはどこか行ったの?」
「ぁあ、彼女ならさっき酒保に行ったわよ? なんでも提督に頼まれてた品
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