06.重い切り札
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特有の、ゆったりとした空気が球磨さんの周囲にだけ漂っているように見える……木曾さんと球磨さんの空間だけが、なにやらピリピリかつゆるゆるとした矛盾した空気が流れていた。
「……クマ?」
……あ、よく見たらアホ毛がぴょこぴょこ動いてる。
「それから、今回はみんなと共に特殊艇“おおたき”も出撃する」
提督がほんの一瞬、言い辛そうな顔を浮かべたのが分かった。
「……“おおたき”には、岸田とシュウが乗船する。比叡を救出するまでの間、旗艦は“おおたき”だ」
そう。これは僕も驚いた。確かに僕は姉ちゃん救出部隊が再度編成されるという話を聞いた時、一緒に連れて行ってもらえないか頼んでみるつもりではあった。元の世界に帰る云々の関係もあるが、姉ちゃんのピンチに手をこまねいているわけにもいかない……しかしド素人の僕が艦隊に付いて行って果たして大丈夫なのか……と言うのをためらっていた時に岸田が……
『シュウ、俺達も行くぞ』
と言ってくれた。元々岸田は、身の安全を確保するためにこっちの世界に来た。それなのに、自ら危険な戦闘に突っ込んできてしまえば、こっちに来てもらった意味がない。シュウにしても、比叡救援艦隊に編成されれば、元の世界に強制送還される危険性が増す……と猛反対する提督と岸田の間でものすごい舌戦を繰り広げた末、結局提督が折れたそうだ。
「でもさ岸田。お前、船の操縦なんて出来るの?」
「心配はいらん。手は打ってある。それにお前一人にだけ、カッコイイ真似させられるかッ」
こんな風に非常にイケメンなことを岸田は言っていたが、僕は岸田のつぶやきを聞いてしまった。
――ディフフフフ……これで金剛ちゃんに、俺のカッコイイとこ見せて……デュフフフ
それさえなきゃカッコよかったのに……あとで金剛さんにチクってやろう。
「What? どうしたんデース?」
「いえ、後で話します」
「?」
「では他に質問がないなら、ブリーフィングは終了。夕張の作業が完了次第出撃。恐らくはあと一時間ほどで完了するだろう。それまで各自待機! 以上! 解散!!」
皆が勢い良く返事をし、敬礼をして部屋から出て行く。僕は自分たちが乗る船の様子を見るべく、岸田と共に工廠に来た。工廠では、夕張さんが急ピッチで作業を進めていた。
「夕張さん!」
「あら! 岸田くんとシュウくん!」
「船の準備はどお?」
「進捗は試運転込みで大体70%ってとこかなー。後もう少しで準備出来るわよ。そしたら一度試運転してみて、大丈夫なようなら行けるわ!」
ツナギにランニングシャツというちょっときわどい服装の夕張さんが、油で汚れた顔でそう答えた。準備してくれている船は、モーターボートが少し大きくなったぐらいの大きさで、ちょうど小田浦
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