第十六章 ド・オルニエールの安穏
第四話 抱擁
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ていた木に頭から突っ込んだ後、枝を伝って飛び出た窓から戻ってきていた。
「むう……何で無視するのねお姉さま? ベッドでごそごそしたら何時もお水を飲んでいるからわざわざ隠れて待っていたのに、何で怒っ―――いたた!? 何で叩くのねお姉さまっ?!」
突然振り返って無言で叩いてくるタバサにシルフィードは文句を口にする。しかしタバサは無表情ながら頬を赤く染めた顔で無言でシルフィードを叩くだけで口を開かない。
「もうねっ! 何なのねっ! 何でそんなに怒っているのねっ! 一体お姉さまはベッドで何をしていたのねっ!?」
とうとう頭を抱え部屋の中を逃げ始めるシルフィードの後ろを、増す増す顔を真っ赤にさせたタバサが長い杖を大上段に構えた姿で追いかけ始めた。ドタバタと部屋を駆け巡る二人(一人と一匹?)。逃げ回るシルフィードを小さいながらも機敏な動きと冷静な思考でタバサは追い詰めていく。そして遂にシルフィードを壁際に追い詰めるタバサ。震えて縮こまるシルフィードに、タバサはいざ大上段に構えた杖をふり下ろそうとする。
絶体絶命のシルフィード。
しかし、断罪の刃は振り下ろされる事はなかった。
そのピンチを救ったのは、居室の外から響いた衛士の声であった。
「東薔薇花壇警護騎士団長、バッソ・カステルモール殿!」
今まさに振り下ろさんとした杖と怯えて縮こまるシルフィードを見比べたタバサは、小さく溜め息を吐くとテーブルに置いていた王冠を被ると、軽く身だしなみを整え入室に許可を与える。
タバサの許可を得、部屋に入ってきたカステルモールは、女王姿のタバサを見ると足を止め唐突に涙を流し始めた。タバサの戴冠後、カステルモールは、若い貴族を新たに加えた新生東薔薇花壇騎士団の団長として再び仕え始めたのだった。とは言え、彼は団の切り盛りを副団長に任せ、本人は何やらタバサのためにと色々と動いているようであったが……。
「ああ……このような立派なお姿、亡きオルレアン公が見れば、泣いてお喜びになられるでしょう……」
よよよ……とばかりに涙に濡れる顔を片手で覆い天を仰ぐカステルモールの様子に、タバサは何処か気まずそうにベッドの方をチラリと見る。が、直ぐに自然な動きでベッドから視線を離すと、気分を切り替えるようにコホンと一つ咳払いし、タバサは未だ感動を露わにするカステルモールに話を促した。
タバサの意図を読んだカステルモールは、一つ大きく頷くと、喜色満面な顔で手を叩いた。カステルモールの合図に、直ぐに部屋の扉が開くと、両手を縄で縛られた一人の女を連れた騎士が入ってきた。
「きゅいッ!? あ〜ッ!! わがまま王女ねっ!」
騎士が連れた女の顔を見たシルフィードが、女を指差し驚愕の声を上げた。
「その通りでございます。さる修道院に
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