第十六章 ド・オルニエールの安穏
第四話 抱擁
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すと鼻息も荒々しく、胸を張ったままグラスを伸ばすシルフィードを前に、タバサは俯かせていた顔をゆっくりと上げていく。
「…………そう」
「あれ? お姉さま何でそんな目で見るのね?」
褒められるのを期待して立つシルフィードとは逆の方向へと這って移動したタバサは、ベッドから降りると、小さく溜め息を吐き冷え切った視線をシルフィードに向けた。
「……別に、あなたが悪いわけじゃない。それは……理解している」
「お、お姉さま? 何で杖を向けるのね?」
ぶつぶつと呟きながらベッドに立て掛けていた杖を握り締めたタバサは、ゆっくりとその切っ先をシルフィードへと向けた。
「部屋に入って、ちゃんと確認していなかったわたしも悪いと、分かっている」
「…………」
何処か遠くを見るような目つきでうんうんと頷くばかりで、全く自分の声に反応しないタバサに、流石のシルフィードも不穏な気配を感じジリジリと後ずさりを始める。
だが、全ては遅きに逸した。
「でも。納得できるかできないかは―――別の話」
「―――ッ!」
タバサを中心に魔力が渦を巻く。
巨大な竜巻のように渦巻く魔力と殺意を前に、シルフィードの全身に鳥肌が立つ。慌てて逃げ出すシルフィードだが、そうは問屋が卸さない。
「―――ッッ!!! いるならいるで、声を掛けてッ!!」
珍しく声を荒げたタバサの声と共に、部屋の中を暴風が駆け抜けた。
避ける事も出来ず荒ぶる風に巻き込まれたシルフィードの足が床を離れ、
「っうぎゃあああぁぁあ―――なのねッ!!!?」
シルフィードは哀れそのまま窓ガラスを突き破り外へと放り出されてしまった。
「全くもうねっ! わたしじゃなくちゃ死んじゃっていたのねっ! お姉さまは怒りん坊なのねっ!!」
「…………」
女官のお仕着せに付いた割れたガラス片やら枝やら葉っぱやらを払い、プンプンとばかりに怒りを顕にしているシルフィードに背を向けながら、タバサは一人黙々とベッドの後始末をしていた。現在のタバサの服装は部屋に入った時に着替えた部屋着ではなく、部屋に入った際に脱ぎ捨てた豪華な女王としての衣装を再び着ていた。動きやすい部屋着は、ベッドの上での運動と、シルフィードとの一戦の他に、怒りに任せシルフィードを窓の外へ放り捨てた際に居室の外を守る衛兵が何事だと部屋に入ってこようとするのを押しとどめた際にボロボロとなってしまった事から着替えるはめとなってしまっていた。
一国の女王様が、自分のベッドのシーツを小さく折りたたんでいる姿からは、A○フィールド並の強固な壁を感じさせるが、そんな事はお構いなくシルフィードは話しかけてくる。なお、窓から放り出されたシルフィードは、丁度窓の下に生え
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