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逆さの砂時計
オペラセリアのエピローグ 5
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せん。多分、初めてお会いすると思うのですが」
「……そう、ですか」

 次期様の肩が目に見えて落ちる。
 そんな、捨てられた仔犬みたいに潤んだ目で見られても……

 ……………………あれ?
 ちょっと待って、この感じ。

「失礼しました。では、バーデルへの巡礼を……」

 しょんぼりした背中を向けられ。
 一つの面影が、記憶に輪郭を浮かべる。

 まさか

「……『テオ』……?」

「…………っ!!」

 黒い髪がぶわっと広がり、宙を泳ぐ。
 振り向いた瞳を濡らす……綺麗な涙。

「やっぱり! やっぱり、生きてたんだね! 良かった、また会えた!」

 勢いはあまりなくても、体格は(いのしし)達と同等だ。
 正面からどかーんと体当たりされ、しがみつかれ、一瞬息が止まる。
 茫然とする自分の肩を抱いて零れ落ちる、次期様の嗚咽。

「ごめん。何もできなくて、ごめんね……っ!」

 あの時と同じ涙。
 あの時と同じ言葉。


 ……生きて、いた。

 テオは……生きていたのか……。



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